「自分の思うとおりにならないとなんでも気が済まないお坊ちゃん」──2月に元院長とその弟の医師が逮捕され、世間の注目を浴びた青森県・八戸市内にあるみちのく記念病院。過去にこの病院に勤務していたこともあるAさんによると、元院長はスタッフらからこう見られていたのだという。
Aさんが続ける。
「元院長の家はかなりの豪邸だったようです。病院でもスタッフに対して高圧的に振る舞うなど“王様”のようでした。私も突然怒鳴られたことがあって……」
元院長の人物像に迫る前に、まずは事件を振り返る。
およそ400床の病床を備え、市内でも中核的な役割を果たすみちのく記念病院の“闇”が白日の下にさらされたのは2月中旬のことだった。
「2月14日、犯人隠避の容疑で逮捕されたのは元院長の石山隆容疑者(61)と、弟で同じく医師の石山哲容疑者(60)です。ふたりは共謀のうえ、入院していた男性が、同室の男に殺害されたと知りながら、死因を『肺炎』とする虚偽の死亡診断書を親族に交付した疑いなどに問われています」(全国紙社会部記者)
事の発端は約2年前のことだ。2023年3月12日深夜、同病院の看護師が見回りをしていたところ、顔から出血している高橋生悦さん(当時73)を発見し、翌日に死亡が確認された。
「高橋さんの顔面に歯ブラシを突き刺し殺害したとして2023年3月28日、同室に入院していた男(59)が逮捕されました。昨年7月に下された判決によれば、男は事件の1か月ほど前から両手をベッドにくくり付けられるなどの身体拘束を受けており、『人を殺せば退院できる』と考え犯行に及んだようです」(同前)
事件の発覚から逮捕までおよそ2週間。捜査が遅れた背景には、石山容疑者らによる“隠ぺい工作”があった。
「捜査関係者によれば石山容疑者らは事件後、殺人の発覚を免れるためか、男を閉鎖病棟に移す手配をしたといいます。また捜査前に現場となった病室にあった凶器などが片付けられていたこともわかっており、両容疑者から病院側になんらかの指示があったのではないかともみている」
石山容疑者らはなぜ、患者の殺人をかくまったのか──。隠ぺいが表沙汰になるにつれ、さらなる事実がわかる。
「死亡した高橋さんの虚偽の診断書は、当時認知症で入院していた80代の医師(のちに死亡)の名前で発行されており、同様の名義で発行されたものが100枚以上も押収されている。署名の特徴が異なるものもあり、警察は別の病院関係者が診断書を書いた可能性も視野に入れて捜査しています」
元スタッフが告白、元院長の“王様エピソード”