異例の4回目の逮捕だ。
東京都内の踏切で2023年末に、自殺に見せかけて当時56歳の男性が殺害された疑いのある事件。警視庁捜査一課は2月19日、男性をハンマーで殴るなどしたとして傷害などの疑いで、元同僚の塗装工事会社代表取締役の佐々木学容疑者(39)、社員の島畑明仁容疑者(34)と岩出篤哉容疑者(30)の3人を再逮捕した。
「3人の再逮捕容疑は23年7~9月、出張先の静岡県富士宮市の駐車場に止めた車の中で、亡くなった髙野修さんの陰部や顔をハンマーで殴ったなど凄惨なものです」(警視庁担当記者)
佐々木が経営する会社の社員だった髙野さん。佐々木と島畑は、20年8月、髙野さんの自宅で髙野さんの後ろから熱湯をかけて火傷を負わせた嫌疑もかけられている。
陰部をハンマーで殴り、食器用洗剤を飲ませ、肛門に鉄の棒を…
「髙野さんは病院を受診した際に『シャワーで間違って熱湯がかかった』などと説明しており、これも佐々木らの圧力でそう説明させられたと捜査一課はみています」(同前)
昨年12月から始まった佐々木らの連続逮捕。逮捕容疑を時系列に並べただけでも、その凄惨ないじめが浮かんでくる。
髙野さんが佐々木のもとで働き始めたのは15年。まず20年8月に、前述の熱湯事件が起きる。22年7月、ホテルでプロレス技をかけられ、23年6~9月には陰部をハンマーで殴られたり、食器用洗剤を飲まされたほか、複数回にわたって自宅などで肛門に鉄の棒などを突っ込まれる。また、頭からベッドに落とすプロレス技をかけられた。
「『やめて』と懇願する髙野さんを尻目に笑う佐々木らの動画も残っていました」(同前)
「殺人にだけ関与しないのはおかしい」
そして同年末、髙野さんは車に監禁された後、踏切で電車にはねられて亡くなる。その様子を近くで見ていたとされる島畑と同社社員の野﨑俊太被告(39)は殺人で起訴されたが、佐々木と岩出は殺人については処分保留となっている。
捜査関係者が打ち明ける。
「殺人容疑で逮捕したときは全員を殺人で起訴するのは難しいという見通しもあったが、島畑らは殺人でも起訴された。ほとんどのいじめに関与しながら『殺人にだけ関与しないのはおかしい』という論理で佐々木と岩出も殺人で起訴できると踏んでいる」
今回の逮捕で注目されるのは、熱湯事件だけ発生時期が他と離れていることだ。事件には佐々木のほかに殺人で起訴された島畑も関わっている。
「熱湯事件は次の逮捕に回すこともできたはず。あえて逮捕容疑に加えたということは、これが最後の大勝負で、あとは検察の判断待ちということだろう」と警察OBは読む。
事件はいよいよ大詰めだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年3月6日号)