伊藤詩織のドキュメンタリー映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』が、世界中の多くの国で観られるようになった。ただし観られない国もある……。彼女の出身国である日本だ。
【写真を見る】指摘された問題点について修正した内容を語ったプロデューサーのエリック・ニアリ氏
2015年に東京のホテルで性暴力被害を受けた後、伊藤詩織は自分の個人的な闘いを、ほかの女性が同じ経験をしないようにする機会に変えた。警察や裁判所の態度に失望した彼女は、勇気ある決断をし、事件を公表した。
警察上層部や検察の敵意と無関心と戦いながら、彼女はベストセラーを書き上げ、タイム誌の「2020年世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は約60カ国で上映され、この部門で日本が初めてアカデミー賞にノミネートされた。
彼女が2025年のアカデミー賞に登場したとき、大坂なおみがグランドスラム大会で争ったときや、大谷がワールドシリーズで打席に立ったときのように、日本人として誇りと興奮を感じることもできたはずだ。だが、現実はそうはならなかった。
性暴力を公の場で訴える先例に
性暴力は、被害者が罪悪感を覚え、犯人は無実と感じるという特殊な犯罪である。被害者が感じる不当な羞恥心は、告訴しないように、告訴しても公にはしないように被害者を誘引する。伊藤詩織が、元自衛隊員の五ノ井里奈のように、性暴力を公の場で訴えるという選択をしたことにより、日本のこのような考え方を打ち破ることができるかもしれない。
ジャニー喜多川による性加害問題が露呈し、その他の著名な事件が最近私たちに思い起こさせたように、性暴力はこの国において根深く残る問題である。もっと一般的に言えば、日本では女性の地位が向上しているとは言えない。2015年に伊藤詩織が性暴力被害を受けて以来、世界経済フォーラムの男女平等指数において、日本の順位は101位から118位(2024年版報告書)に低下した。
しかし、3月3日のアカデミー賞で伊藤詩織の名前が発表されても、日本社会がそれを祝福することはなかった。昨年10月以降、このドキュメンタリーの日本での公開は、伊藤詩織の元弁護士からの無許可映像使用に関する疑義によって実現に至っていない。
西廣陽子弁護士と彼女の支持者たちは、このドキュメンタリーが、伊藤詩織が法廷でのみ使用すると約束した防犯カメラ映像を使用していること、そして彼女の物語に登場する重要な人物の映像が無許可で使われていることに不満を抱いている。事件を担当する警察官、その夜ホテルまで2人を運んだタクシー運転手、性暴力について集まって議論する女性たち、そして西廣弁護士自身だ。
どの点が修正されるのか?