兵庫や神奈川、福岡など6県にまたがり、金属加工会社の倉庫などから銅線や金属くずの窃盗を繰り返したとして、兵庫県警捜査3課などが窃盗容疑などで、いずれもベトナム国籍で無職のホアン・ヴァン・ダオ被告(29)=窃盗罪などで公判中=ら男4人を逮捕、送検していたことが18日、捜査関係者への取材で分かった。県警はこれまでに13件の建造物侵入と窃盗被害を裏付け、被害額は約5700万円相当に上るという。県警は、主に金属を狙うベトナム人窃盗グループとみている。
ほかに逮捕、送検されたのはいずれも住所不定、無職のドゥアン・ヴァン・キー(35)=窃盗罪などで公判中、レ・ヴァン・トゥアン(26)=同、ギェム・キ・ラン(28)=同=の3被告。
捜査関係者などによると、4人は昨年6~10月ごろ、同県相生市や赤穂市、岡山県内の金属加工会社の敷地内に侵入し、倉庫などから銅線や金属くずなどを窃取したとしている。
4人は容疑を認めており、「ベトナムでの借金返済と生活費に使った」などと話しているという。
また、県警は、このベトナム人窃盗グループから盗品の金属を買い取っていたとして、盗品等有償譲受などの疑いで「龍昇産業」(愛知県知多市)の役員で中国籍の孫彦(ソンヤンヤン)容疑者(36)=愛知県名古屋市南区=と、事務員の仲村裕子容疑者(34)=同=を逮捕、送検した。
2人は容疑を否認し、孫容疑者は「買い取ったことは間違いないが、盗んできた銅線とは思わなかった」などと話しているという。
金属盗被害深刻化、換金防止へ法整備
銅線ケーブルなど金属を狙った窃盗事件が全国的に多発している。警察庁が統計を取り始めた令和2年の金属盗は5478件だったが、年々増加し、6年は2万701件と4倍近く増えた。金属盗の増加の背景には、金属価格の国際的な上昇があるほか、盗んだ金属を容易に換金できる環境が被害の拡大に拍車をかけているとみられる。
特に、銅を大量に使用する電気自動車(EV)の普及などで2年以降、国際的な銅価格が高騰。他の金属に比べ高額で取引されているという。
こうした事態を受け、政府は3月、金属くず買い取り業者の届け出や、売り主の本人確認の義務化などを盛り込んだ金属盗対策法案を閣議決定した。
買い取り事業者には、都道府県公安委員会への事業者名などの届け出を義務付け、違反した場合は6カ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または両方を科す。さらに、売り主の本人確認のほか、取引記録の3年間の保存や、個人が夜間に大量の金属くずを持ち込むなどの盗品の疑いがある場合の警察への申告も義務化する。公布後1年以内に順次施行されることになっており、深刻化する金属盗被害の歯止めとなることが期待されている。
また、外国人の摘発が目立つことから、入管難民法も改正する方針。金属盗対策法の犯行工具の隠し持ちで拘禁刑になった外国人を、上陸の拒否や退去強制の対象に加えるという。
各地で防犯体制の強化も進められ、兵庫県警では、施設周辺に頑強なフェンスや門扉を設置するほか、動体検知センサーや侵入感知システムを設置するなどの対策を呼びかけている。