「死刑執行を執行当日に告知するのは憲法などに違反している」として、死刑囚2人が国を訴えている裁判。2審判決を不服として、国側・死刑囚側の双方が3月31日、最高裁判所に上告しました。
大阪高裁は、死刑囚側の訴えを全面的に退けた1審判決を一部変更し、「当日告知に基づく死刑執行を受け入れる義務がないことの確認の訴え」について、“訴えを起こすこと自体は適法で、当日告知の違法性・違憲性を大阪地裁で改めて審理すべき”と判断しましたが、死刑囚側は、賠償請求が1審に続き棄却された点を不服としています。
▼告知は執行の1~2時間前「人間の尊厳などの面で違憲」死刑囚2人が国を提訴
日本の死刑執行は現在、執行の1~2時間前に死刑囚本人に告知されています。この「当日告知」は法律で定められているわけではなく、法務省による行政運用です。
国は当日告知の理由を、これまでの国会答弁や法相の会見などでは、“死刑囚の心情の安定への配慮”としています。
この運用をめぐり、大阪拘置所に収容されている死刑囚2人は、死刑執行の差し止めを求めるわけではないとしたうえで、「当日告知」は、刑罰執行の適正な手続きの面でも、人間の尊厳の面でも、憲法や国際人権規約に違反していると主張。
国に対し、▽当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がないことの確認と、▽執行がいつ行われるか分からない恐怖=精神的苦痛などに対する2200万円の賠償を求め、2021年に大阪地裁に提訴しました。
▼1審は死刑囚側が全面敗訴受忍義務がない点の確認は「確定した死刑判決との矛盾が生じ許されない」
1審の大阪地裁(横田典子裁判長)は去年4月、過去の判例も踏まえ、「当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がないと確認することは結局、現在行われている方法による死刑執行を許さない効果を生み、確定した死刑判決との矛盾を生じさせるから、許されない」と判断。
「告知のあり方も含めた死刑執行方法の違憲・違法性は、その執行方法を前提とする刑事裁判で争うべき」として、受忍義務がない確認を求めた訴えについて、不適法と判断し「却下」(=門前払い)しました。
そのうえで、
▽現行の死刑制度上、死刑囚には執行を受ける時期について自己決定権がないのだから、「執行の時期を事前に知り、それまで自分がどのように生きるかを決める権利」が保障されているとも言えない
▽執行前日に告知を受けた死刑囚が自殺したケースがあった経緯を踏まえれば、当日告知は一定の合理性がある
などとして、賠償請求も「棄却」。死刑囚側の訴えを全面的に退ける判決を言い渡しました。
この判決を不服として、死刑囚側が大阪高裁に控訴していました。
▼2審は“訴えを起こすこと自体は適法”と判断
大阪高裁(黒野功久裁判長)は3月17日、「当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がない確認を求める訴え」について、「仮に当日告知の運用が違憲・違法であるならば、執行前日までのしかるべき時期に告知を行うようにすればいいのあり、これにより適法に死刑を執行することは十分可能」「『当日告知の運用が違憲・違法であれば、死刑判決自体が違法となる』という関係は成立しない」として、“訴えを起こすこと自体は適法”と判断。
1審が不適法と判断して却下した部分については取り消し、審理を大阪地裁に差し戻す判決を言い渡しました。
一方で賠償の請求は、1審に続いて棄却しました。
▼国側・死刑囚側の双方が上告:)
この2審判決をめぐって3月31日、国側が最高裁に上告しました。
また、賠償請求が棄却された点を不服として、死刑囚側も最高裁に上告しました。
(松本陸)