だから政治家は「裏金」をやめられない…国会議員を縛る政治資金規正法が「ザル法」と言われる理由を解説する

「政治とカネ」を語るうえで、よく混同されるのが政治家個人のお金と、政治家が管理している政治団体や政党支部のお金の違いです。ここまで紹介した年2回の期末手当を含む歳費、調査研究広報滞在費(旧文通費)は政治家個人へ入るお金です。以降は、主に、政治団体や政党支部に入るお金について、説明したいと思います。
その説明をするために、2023年から2024年にかけて話題になった政治資金パーティー収入の裏金問題の話を、簡単に触れたいと思います。というのも、この問題でも、政治家個人が受け取ったお金なのか、政治家が管理する政治団体が受け取ったお金なのかが、曖昧となっていたからです。
もし、派閥の政治団体から、政治資金パーティー収入のキックバックを、政治家個人が寄付として受け取っていたとすれば、これは違法行為です。政治資金規正法上、政治家個人は寄付を受けてはいけないからです。
寄付はすべて政治団体が受けるとして定められています。政治団体がお金を受け取り、それを議員の政治活動に使う。その代わり、政治団体はお金の出し入れを政治団体の政治資金収支報告書にすべて記載し、公開しなければなりません。
ただし、政治団体が受け取った以上、この収支報告書に記入しないと「不記載」という違法行為になります。寄付の総量や1人あたりの上限といった規制はあるのですが、規制の範囲内でなら、政治団体が献金を受け取ってもいいとされています。
くだんの裏金問題のお金について、ある議員は「金庫にしまっていました」、別の議員は「引き出しにしまっていて忘れていました」とそれぞれ弁明しました。しかし、そのお金が政治家個人でもらったのか、政治家が管理する政治団体がもらったのかをはっきりさせませんでした。
これは、個人がもらったなら、もらった時点で違法行為ですし、政治団体がもらったのなら、政治資金収支報告書に書いてないことが違法行為にあたるからでしょう。
そこで、こうしたケースでは、政治団体がもらっていたが、政治資金収支報告書に記載していなかった、という言い訳がたびたび使われてきました。政治団体の代表は議員ですが、会計責任は秘書など別の人が担当しています。
議員は「会計責任者が書き忘れた」という理由で、責任を逃れるのです。結局、会計責任者だけが罪を問われるという、理不尽な構図になっており、政治資金パーティー収入の裏金問題も、ほぼそのようになりました。
政治家が、合法的に政治資金を捻出する一つの方法が、寄付を受けることです。政治活動への寄付は、自身が代表を務める政党支部や、自身の資金管理団体や後援会といった政治団体であれば、受け皿になれます。
図表1は、寄付の総枠制限と個別制限になります。個人からは、政党や政党支部、政党が指定する政治資金団体に対しては、年間総計2000万円以内の寄付が可能です。たとえば、Aさんが、政党の立憲民主党と日本維新の会、自民党の政治資金団体・国民政治協会と国民民主党の同・国民改革懇話会に、それぞれ500万円を寄付することが可能です。
個人から、公職の候補者が指定する資金管理団体や、それ以外の後援会などの政治団体に対しては、年間総計1000万円以内の寄付が可能です。ただし、資金管理団体、「その他の政治団体」については、それぞれ個別に年間150万円以内という上限もついています。たとえば、Aさんが、政治家Bさん・政治家Cさん・政治家Dさん・政治家Eさんの資金管理団体にそれぞれ150万円、政治家Dさん・政治家Eさん・政治家Fさん・政治家Gさんの後援会にもそれぞれ100万円を寄付することが可能です。
ちなみに、政治家個人の歳費や収入・預貯金を、自身が代表を務める政党支部や自身の資金管理団体に寄付することもできます。その際、政党支部を含む政党へ寄付した場合は、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれるという、税控除の仕組みも使えます。資金管理団体や自身の後援会に寄付した場合は、この税優遇は受けられません。
政治家ではない一般の方が、寄付して税控除を受けられることは理解されますが、政治家が自身が代表を務める政党支部に寄付して税控除を受けるのは、「制度の悪用」と指摘する声が根強くあります。(※15)
政治家が自身の資金管理団体に寄付する場合は、税優遇はないのですが、先に挙げた個別制限の150万円が取り払われます。総枠制限の年間1000万円までの寄付が可能になります。たとえば、政治家Bさんが、自身の資金管理団体に800万円、自身の後援会に150万円、懇意にしている政治家Cさんの後援会に50万円を寄付することが可能なのです。
また、企業や労働組合などの団体からは、政治家個人の資金管理団体やそれ以外の政治団体への寄付は禁止されています。しかし、政党・政党支部、政党が指定する政治資金団体であれば、寄付することができます。資本金や組合員の数で金額が変わりますが、年間750万円から1億円の寄付が合法的にできるのです。さらに政治団体から政治団体への寄付もできます。
政治家個人に対する寄付の制限は厳しいのですが、例外が二つ存在します。
一つは、政治家個人への寄付でも、「選挙運動」に関するものは例外になっていることです。国会議員などの公職の候補者個人に対しては、年間150万円以内なら金銭による寄付も可能です。これが俗に「陣中見舞い」といわれるものです。簡単にいえば、選挙の際に出すお金を指します。これは、「選挙運動費用収支報告書」で報告され、公開されます。
もう一つが、政党支部含む政党から政治家個人への寄付が認められていることです。議員個人が政党から受け取る「政策活動費」「組織活動費」が、それに該当します。この場合、支払った政党の政治資金収支報告書には額や支払い先の議員名などを記載する義務がありますが、受け取った側は、議員個人が受け取るため、政治団体ではないですから、収支報告書への記載義務がありません。これは合法的な裏金システムであるという疑惑があります。
国会議員に限らず、知事・市長や県・市議会議員といった政治家は給与として手にしているお金のほかに、政治活動に必要なお金を調達しなければ、政治活動を継続することができません。会社員でいえば経費にあたる部分ですが、そういった経費をどうやって捻出しているのか。これまでに説明してきたように、国会議員は、歳費とは別に、旧文通費や立法事務費など、さまざまな名目で税金が個人に対して充てられていました。
また、国から政党に対しては、政党交付金(政党助成金)と呼ばれる活動資金が支給されています。第3章で触れますが、1980年代から1990年代にかけて、政治家と企業の間の金権スキャンダルが多発した際、政治にお金がかかりすぎることが問題視されました。そこで、政党が税金で運営できれば、企業献金や団体献金といったものに頼らず、特定の企業や団体との癒着を防げ、政党が健全に政治活動できる、ということで、政党助成金が新たに創設されたのです。国が政治活動の原資を保障することで、政治活動の公明と公正の確保を図り、民主政治の健全な発展に寄与する、という建前です。
赤ちゃんを含む国民1人あたり250円分の税金が投入され、毎年300億円を超すお金が政党に割り振られています。
2024年度における総額は315億3600万円(100万円以下は切り捨て。2024年4月1日時点)。そのうち与党第1党の自民党は160億5300万円(同)、野党第1党の立憲民主党は68億3500万円(同)となっており(※16)、大政党ほど政党助成金が多く支給されています(図表2)。
政党本部に入った政党助成金は、政党で働く職員の人件費や事務所の家賃に使われますが、所属議員が代表を務める政党支部にも、寄付の形で流れていきます。
政党助成金は政党に支給される活動資金なので、無所属議員には支給されません。政党に所属することは、活動資金面でも保障されることを意味し、活動資金が保障されることで国会議員たちは「金儲け」を気にすることなく政治活動に専念できる、という建前になっています。
通常なら毎年1月1日を基準日として年4回に分けて支給されますが、政党に所属する議員数・選挙の得票数に応じて支給額が異なるので、衆議院選挙・参議院選挙が実施された年は、選挙後に選挙基準日が設けられて、以降の交付額を改めて算定します。
同制度は1995年に創設されて30年ほどとなりますが、自分が支持しているわけでもない政党に対しても自分の税金が充てがわれることになるため、たびたび憲法が保障する「思想信条の自由」に違反しているとの指摘がなされてきました(※17)。日本共産党は、政党助成金の存在理由が憲法違反だとして、政党助成金の交付を申請しておらず、受け取っていません。
政党には政党助成金が支給される仕組みになっていますが、だからといって誰でも政党を結党して政党助成金を受け取れるわけではありません。政党助成金を受け取るには、政党助成法が定める政党要件を満たす必要があります。
一つは、衆・参の国会議員が5人以上いること、という条件です。これは、ひと目でわかる基準です。たとえば衆・参で4人しか国会議員がいない政党は、政党助成金を支給されません。1人足りないだけで本来なら年間で数億円が支給されるはずなのに、それがゼロになるわけです。
もう一つは、所属国会議員が一人以上で、前回衆院選の選挙区または比例代表、前回もしくは前々回の参院選で選挙区または比例代表の得票率が2%以上になる、という条件です。
国会議員にとって、政党要件を満たすことは、所属の政党が政党助成金を得られるか否かという死活問題です。自分が所属している政党に不満があっても、飛び出して新党を旗揚げする動きがなかなか出ないことは、政党助成法が定める政党要件が満たせずに政党助成金を受け取れないからという事情も関係しているでしょう。
政党助成金制度は私たちの税金が原資になっていますが、前述したように、制度創設から事あるごとに「憲法違反」の指摘がされてきました。それだけではありません。企業・団体からの献金依存から脱却するために、政党助成金を創設する、という議論をしていたはずなのに、現状では、企業・団体献金が温存されたまま、政党助成金も受け取れるという「二重取り」の状態になっているのです。
これは、政治家自身もおかしいと思っている人がおり、自民党の大物議員であり、「政治とカネ」の事件で逮捕された金丸信氏ですら、政党助成金のことを「盗人(ぬすっと)に追い銭になる」と批判するほどでした。
では、どんな企業・団体献金が行われているのか。与党は政治を動かす立場にあることから、企業や団体の献金が集まりやすいことは、誰でも想像できます。与党第1党の自民党の政治資金団体・国民政治協会は、日本医師連盟、日本自動車工業会、日本電気工業会、日本鉄鋼連盟など、数々の業界団体から献金を受けています(※18)。一般企業でいえば、住友化学、トヨタ自動車、日立製作所、キヤノンなど、有名企業が名を連ねます。(※19)
なお、業界団体が、その関係者の政治家や、政治家の後援会を金銭面で支援することもよくあります。たとえば、四国電力労働組合政治連盟は、四国電力労組の関係者である徳島市議会議員、高知市議会議員、高松市議会議員、松山市議会議員の後援会に、それぞれ数百万円を献金していました。(※20)
このような企業や団体の献金は、政党や政治家の活動を支える一方、政党や政治家が企業・団体献金に依存する危険性を孕んでいます。政党・政治家が、一般国民の声を聞かず、業界団体や企業の代弁者となってしまえば、民主主義を歪(ゆが)めることになりかねません。
※15 東京新聞TOKYO Web2024年6月23日「改正政治資金規正法が見逃した政治家の合法的な『税逃れ』 党支部寄付の『悪用』は、いつまで許されるのか」
※16 朝日新聞デジタル2024年4月1日「2024年の政党交付金、9党に315億円 総務省が決定」
※17 参議院 第203回国会請願の要旨
※18 会社四季報オンライン2024年4月3日「『自民党へ1000万円以上の献金をした諸団体』最新13団体 断然トップは2億円の日本医師連盟」
※19 会社四季報オンライン2023年2月13日「最新版『自民党への献金額が大きい上場企業』トップ26社 1社を除いて日経平均銘柄が独占」
※20 四国電力労働組合政治連盟 政治資金収支報告書(令和5年2月14日)
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(ジャーナリスト 鮫島 浩)