全国の民間空港で2024年に米軍機が着陸した回数は21空港に計317回で、そのうち熊本空港(熊本県益城町)が最多の88回だったことが国土交通省のまとめで判明した。全国の4分の1超を占めた。対中国を念頭に、日米は九州・沖縄で離島防衛の訓練を頻繁に実施しており、専門家は、地理的な理由や部隊運用面での利点から熊本空港の使用が増えているとみる。なし崩しに進む軍事利用に、地元では不安と不信の声が漏れる。
「あの杉の木の上あたりを飛んでいった。演習の帰りかなと。(旅客機とは)全く音が違った」
熊本空港の直近、熊本県菊陽町道明地区で暮らす町議の馬場功世(こうせい)さん(73)は今年2月下旬、自宅の庭の上空をオスプレイが飛ぶのを目撃した。当時、陸上自衛隊と米海兵隊は共同訓練「アイアン・フィスト」を九州・沖縄で実施し、陸自高遊原(たかゆうばる)分屯地と滑走路を共有する熊本空港には日米双方のオスプレイが飛来していた。馬場さんが目撃したのもその1機とみられる。
熊本空港に現れるのは米軍機だけではない。2024年12月にはオーストラリア軍のKC30空中給油機が、25年2、3月にはインド軍のC17輸送機がそれぞれ訓練で飛来した。24年10月には宮崎県の航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地所属の空自F15戦闘機4機が来て、爆音を響かせた。防衛省によると、戦闘機が熊本空港を使用したのは初めてだった。
防衛省九州防衛局は個々の訓練実施を事前に地元自治体に伝えているが、熊本空港の軍事利用の進め方について住民説明会が開かれたことはない。馬場さんは住民の声も聞かないまま既成事実化していくことに不信感を募らせる。「なし崩しだと感じる。慣らしていくというか……。事故の危険もあり、有事に標的となる恐れもある。皆さんにも話さにゃならんし、国はきちんと説明してほしい」
他の住民からも不安の声が漏れる。50代の主婦は「米軍機の飛行は減らしてほしいが、よそに訓練をやってもそこが大変でしょうし」と複雑な思いを口にし、「とにかく事故を起こさないでほしい」と願う。80代の無職の女性は「台湾有事になれば、熊本空港も狙われるのではないか。そう思うと恐ろしい」と話した。【中村敦茂】