未曽有のETC大規模障害 状況わからず足止め、高速道路を歩く人も

かつてない大規模障害が発生した中日本高速道路(NEXCO中日本)の自動料金収受システム(ETC)。各地で渋滞が発生し、NEXCO中日本はETCレーンを開放する異例の対応に踏み切った。開放当初は後日の支払いを案内したが渋滞を緩和できず、途中から声掛けをやめるなど現場は混乱。多くの利用者が状況が分からないまま足止めされ、高速道路上を歩く人もいたという。
ETC障害が発生したのは6日未明。NEXCO中日本によると、当初は係員がETC利用車を一般レーンに誘導したが、料金所付近の渋滞解消が見通せず、一部の料金所からETC専用レーンの出口を開放。同日午後1時ごろになって全体的に開放を指示した。開放直後はドライバーにチラシを手渡しするなどして後日の支払いを促したが、それでも渋滞は緩和できず、声掛けはせずに通過できるよう対応したという。同社担当者は「通常のトラブルなら一般レーンに誘導するのみだが、ここまで規模が大きいと……」と頭を抱えた。
ウェブメディア「柔術ナビ」の新明佑介編集長(47)は午前8時過ぎ、東京都八王子市であった「全日本キッズ柔術選手権」の広報業務のため首都高速道路に乗った。「中央自動車道が2時間の渋滞」との表示を見て、東北自動車道と圏央道を乗り継ぎ、会場付近の高尾山インターチェンジ(IC)から降りようとしたところで、渋滞に遭遇。そこから2キロ通行するのに約70分かかった。「すごく疲れた。何が起きたか分からなくて、車から降りて高速道路上を歩いている人もいた」。
「どうしてこんなところで止まるのだろう……」。娘の引っ越しを手伝うため、東京都内を目指していた長野県駒ケ根市の自営業、亀田亮さん(53)は首をかしげた。中央道の八王子本線料金所約5キロ手前で急に前の車が止まったからだ。渋滞を抜け高速を降りたのは約2時間後だった。
料金所では「2日以内に通行料金の支払いを」などと書かれた案内を手渡された。支払いは仕方ないと思う一方で、「できれば早いうちに引っ越しを終わらせたかった。(出口を早めに)開放していれば渋滞はなかったのでは」と疑問も残った。
自営業の森下晶夫さん(49)は静岡県富士宮市のキャンプ場から東京都日野市の自宅に戻る前、システム障害について知った。
午前10時半ごろ、山梨県の河口湖ICから中央道に乗った森下さん。自宅に比較的近い国立府中ICまで向かう予定を変更して途中の相模湖IC(神奈川県)で降りることにしたという。本来であれば30分ほどしかかからない道のりだが、IC1キロ手前で渋滞に巻き込まれ、3時間かかった。「10分で車1台分だけ進むペースだった」。周りには、トイレが我慢できず、外で用を足す子どももいたという。自宅にたどり着いたのは午後3時だった。
後日に料金支払いの手続きがあると知った森下さんは「長時間待たされて、ふに落ちない部分もあるが仕方ない。怒る人の気持ちも分かる」と話した。【垂水友里香、田中理知、中村園子】