スマートフォンのビデオ通話機能を使って、110番の通報者に交通事故や災害の現場を詳しく知らせてもらう実証実験を、兵庫県警が今月から始めた。現場の状況を素早く正確に把握し、警察官を現場にどう配置すべきか判断するのが狙い。9月10日までに試験運用して効果を検証し、来年度からの本格導入を目指す。県警によると全国の警察で映像を使った通報システムは例がないという。
新システムは「Live110」(仮称)。地理情報などを提供する通信システム会社「ドーン」(神戸市中央区)が開発した。県警通信指令課が110番を受けた際、GPS(全地球測位システム)で現場の位置を確認し、ビデオ通話ができるか確認。通話料が通報者の負担になることに承諾が得られた場合、県警からショートメールで専用のURLを送信。通報者がアクセスすると、同課員がノートパソコンの画面で現場の状況を見ながら会話もできる。
同課によると、110番は1日平均約1300件を受信し、台風など災害の多い夏場は1日2000件に達することもある。これまでは通報があっても、警察官が現場に到着するまでに時間がかかり、配置する人数や場所を判断する材料が乏しい場合があったという。ドーンは既に救急や救命などで同様の実証実験を進めており、警察でも使えると着目した。
課題もある。危険な現場の場合、安全確保をしながら、どこまで近づいて撮影してもらうべきか個別の判断が必要となる。また、通話料は1分間で40円程度かかる見込みで、通報者の費用負担についても検討が必要だ。県警通信指令課は「新しいシステムに理解を得られるよう、丁寧に説明したい」としている。【藤顕一郎】