〈〈クローゼット遺体〉「フレンドリーでゲーム大好き」「母娘二人暮らし、思春期で…」女子高生はなぜ数年前から知り合いの元工作部・江口容疑者を訪ねたのか〈愛知・一宮〉 〉から続く
愛知県一宮市の民家のクローゼットから東京都葛飾区の高校生・加藤和華さん(16)が遺体で見つかり、この家に住む無職・江口真先容疑者(21)が遺体遺棄容疑で逮捕された事件で、加藤さんが生前オンラインゲームのチームに所属していたという証言が現れた。加藤さんはチームのメンバーに、ネットで知り合って一度も会ったことがない江口容疑者について「好きな感情がある」と話していたことがあったという。ゲームで知り合った二人の間に何があったのか――。
〈画像〉「みんなと仲良くしたい」加藤和華さんがゲームチームに送った自己紹介文、工作部時代の江口容疑者など
「M1KA」と名乗っていた加藤さん
加藤さんは3月28日に母親に「インターネットゲームで知り合った愛知県の友人宅に泊まりに行く」と言って家を出た。母親は翌29日に連絡が取れなくなったため警視庁亀有署に行方不明者届を出し、警視庁から連絡を受けた愛知県警が加藤さんのスマホの位置情報を追跡するなどして31日に江口容疑者宅を訪問。クローゼットの中から遺体を発見し、江口容疑者を逮捕した。
「江口容疑者は『オンラインゲームのことで言い争いになり、自宅にあった包丁で何回も刺した』と供述しました。遺体には20か所以上の刺し傷があり、死因は出血性ショックと確認されました。県警は殺人容疑で調べています」(愛知県警担当記者)
都内の高校に通い、4月から2年生になるはずだった加藤さんは、中学時代から友人の間でオンラインゲーム好きで知られており、江口容疑者とはバトルロイヤル(生き残り)方式のゲームを通じて知り合ったとみられている。
今回、その加藤さんが加わっていたというゲームチームの運営に関わった関係者・Aさんが取材に答えた。
「今は活動を休止している『J』というコミュニティの中にあったバトルロイヤルゲームに特化したeスポーツチームです。加藤さんが入って来たのは結成から2か月ほどたった2023年10月ごろでした。チームには誰でも入れるわけではなく、ゲーム技術の審査があり、それをクリアして入会してきました。
加藤さんは“Mika(ミカ)”と名乗り、仲間うちではそう呼んだり本名で読んだりしていました。DMで本名、大まかな居住地などをメンバーから聞いていたんですが、加藤さんは本名のほかに居住地を『東京都』と記し、『M1KA』と書いてミカと読むXのアカウント名を伝えてきていました」(Aさん)
容疑者はゲームでの気性はちょっと荒かったのですが
入会後に加藤さんが運営側に伝えていた自己紹介文には、本名や「15歳」という年齢のほかに
「みんなと仲良くなりたい」
「ネットでの交流を通じてリラックスし、ゲームが好きな仲間とつながりながら、共通の興味を持つ人たちとのつながりを大切にし、多くの友達を作っていきたいです。みんなと楽しい時間を過ごすことを楽しみにしています!」
とつづられていたという。
「リアルでは会ったことがないんですけど、オンライン上の“雑談”の場で話しているのを聞いた加藤さんの印象は、“陽気で強気な子”“メンタルは弱いけど強気な子”という感じですかね。ゲームで失敗したらへこんでしまうところがあったんですけど、ちょっと攻撃的なことも口にすることがあった印象ですね」(Aさん)
この“雑談”は「J」のメンバー以外にもゲーム好きが入ってくることがあり、江口容疑者もそうした一人だったという。
「江口氏はゲームは結構やってて上手だった子で、私は雑談の時に『みんなの面倒みてくれてるの?』とか話しかけた記憶があります。雑談の時に彼を知る人が『江口』と本名で呼んでいたのを覚えています。ゲームでの気性はちょっと荒かったのですが、彼とも会ったことはないのでリアルはどんな感じの人かは分かりません。
雑談は多い時は10人とか15人が入ってやるんですけど、そのときから加藤さんと江口氏は仲が良かったですね。多分加藤さんはJに入ってくる前から江口氏と知り合っていたんだと思います」(Aさん)
そして加藤さんはJの関係者に、江口容疑者への思いを語っていたという。
「私ではなく、他のメンバーに対してですが、加藤さんが江口氏について『好きな感情があるけど恋愛経験がないからどうしたらいいかわからない』というような内容の相談をしていたと、今回事件が起きた後に聞きました。
二人がその後付き合っていたかどうかは分かりません。“雑談”に二人が参加していた時は、二人は1回もリアルでは会っていなかったみたいですけど、そういう(ネットで知り合っただけの相手に恋愛感情を持つ)人は多いんですよ。ネット恋愛の典型例じゃないかと思います」(Aさん)
「会うのは危険だからやめようと何度も言っていたんです」
愛知県警の調べでは、加藤さんは数年前からネット上で江口容疑者とやり取りしてきたが、実際に会ったのは今回加藤さんが愛知まで会いに行った3月28日が初めてだった可能性がある。江口容疑者はその翌日に加藤さんを刺したと供述しているという。
「バトルロイヤルゲームを2人でやるというのは、1人がプレイしているのをもう1人が横で見ていたり、2人ともプレイしたり、いろいろ方法はあると思うので、実際にどうやっていたかは分からないですね。何かの拍子で強く言いすぎて頭に血がのぼって、となったのかもしれないですね」(Aさん)
実はAさんは「J」のチームメンバーに対して、オフ会で会うのはやめようと何度も呼びかけていたという。
「ネットで知り合った人と会うのは危険だからやめようと何度も言っていたんですけど、それを守らずにオフ会を開いている人たちはいました。ネットの人同士で会うと、何か絶対起きちゃうんですよ。女性だったら襲われるかもしれないし。
今回の事件は、自分が心配していたような危険なことが、心配した以上にひどい形で起きてしまったと思っています。そうした危険があることを、ネットゲームを楽しむ人たちはよく分かってほしいと思います」(Aさん)
加藤さんのSNSからは消息を絶った後も母親や友人宛にメッセージが送られており、愛知県警は江口容疑者が犯行の発覚を防ぐために加藤さんになりすまして送ったとみて調べている。
発信するには加藤さんのアカウントにログインする必要があり、江口容疑者は生前の加藤さんからログイン情報を聞き出していた可能性がある。そして、加藤さんはJのアカウントにも「M1KA」の名でポストしていたが、事件後はこの書き込みも、M1KAのアカウント自体も見つけられなくなっている。
「若い子たちは仲良くなると自分のSNSのログイン情報を互いに教えあったりもするんですね。加藤さんのログイン情報をどうやって知ったかは分かりませんが、事件後に江口氏が加藤さんのXにログインして過去のポストを消したり、アカウントごと消すか売り飛ばしたりしたことも考えられると思います」(Aさん)
加藤さんが楽しむ場を求めたネット。そこへの入口だったSNSのアカウントまでも、江口容疑者は蹂躙したのだろうか。
※「集英社オンライン」では、今回の事件についての情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。 メールアドレス: [email protected] X(旧Twitter) @shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班