石破政権vsトランプ関税は早くも「負け戦」確定か…交渉前から“お人よし”でカードを1枚失う

石破首相が「国難」と呼ぶトランプ関税の交渉に向け、最側近の赤沢経済再生相が16日に訪米する。翌17日にはカウンターパートであるベッセント米財務長官と協議するが、悲しいかな、米政府内では「ミスターアカザワ? 誰?」という程度の認知度。最大の懸念である自動車関税は大丈夫か。先が思いやられる。
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協議に先立ち、政府は赤沢氏と林官房長官を共同議長とする省庁横断の「総合対策タスクフォース」を設置。オールジャパン体制で米側との関税交渉に臨む気合を見せるが、どうにも不安は拭えない。自動車関税を巡る石破政権の国会答弁に歯切れの悪さが目立つのだ。
14日の衆院予算委員会は、トランプ関税について集中審議を開催。ヤリ玉にあがったのは、第1次トランプ政権と安倍政権が2019年9月の日米首脳会談で最終合意した日米貿易協定(翌20年発効)だ。
日本側は米国産牛・豚肉への関税を環太平洋パートナーシップ協定(TPP)並みの水準に引き下げ、譲歩した代わりに、安倍元首相は国会で「日本の自動車・自動車部品に対して追加関税が課されないことは、日米首脳会談において私から直接トランプ大統領に確認しています」と胸を張ったものだ。
ところが、約束を取り付けたはずなのに、トランプ大統領は先月26日、日本車を含め輸入車に25%の追加関税を課すと発表。約束など知ったこっちゃないとばかりに、今月3日から発動した。
予算委で立憲民主党の後藤祐一議員が「約束違反じゃないですか」と指摘すると、赤沢氏は「協定との整合性については深刻な懸念を持っている」とモゴモゴ。「(追加関税)措置の見直しを強く申し入れております」と述べるにとどめた。
安倍元首相は本当にトランプ大統領と約束したのか。それとも単なる口約束だったのか。首脳会談の議事録の国会提出を求める後藤氏に対し、石破首相は「安倍総理からトランプ大統領に明確に確認をしたと承知している」などとノラリクラリ。
「外交上のやりとり」を盾に提出を拒んだ。隠せば隠すほど「本当に約束したのか?」との疑念は尽きない。
「約束した」のであれば、反故にしたトランプ大統領に厳しい態度で臨んでしかるべきなのに、石破政権は「極めて遺憾」の一点張り。交渉前から「負け戦」のフシすらある。
4月1日から米国産品は関税引き下げ
米国は本来、日米貿易協定に基づき日本車の関税をゼロにするはずが、逆に追加関税を発動。対して日本は、米国産牛肉などへの関税を予定通り引き下げたのである。