和歌山県の岸本周平知事が15日、和歌山市内の病院で死去した。68歳。14日午前10時15分ごろ、秘書が市内の公舎を訪ねたところ、意識不明の状態で倒れている岸本氏を発見。救急搬送され、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。
岸本氏は前日の13日、この日開幕した大阪・関西万博を訪れ、県も出展する「関西パビリオン」のセレモニーに参加、みこしを担ぐなどした。夕方には、フェイスブックに東京で会談する様子を投稿。14日午後には、和歌山県新宮市でタウンミーティングに出席する予定だった。現職知事の死亡は2018年の翁長雄志・沖縄県知事以来。
岸本氏は和歌山市出身。東京大を卒業後、旧大蔵省に入り、トヨタ自動車を経て09年の衆院選で初当選。旧民主党政権では経済産業政務官を務めた。国民民主党の幹事長代行だった22年、離党して、無所属で知事選に立候補。自民、立憲民主、国民民主各党などの推薦を受けて初当選した。
県政では専門知識を基に財政再建に取り組んだほか、南海トラフ巨大地震に備えた防災対策にも尽力した。民間での経験を生かして幅広い人脈を築き、飾らない人柄でも知られた。
プリンストン大で教壇に立った時期もあり、著書「中年英語組――プリンストン大学のにわか教授」では、英語の習得に苦労した様子をユーモアたっぷりに描いた。柔道の有段者で、関係者との食事会では畳で受け身を披露するなど、サービス精神も旺盛だった。【安西李姫、駒木智一、加藤敦久】