「弁護士つければNHKは言うこと聞く」クルド特集再放送に批判相次ぐ「切り取り」も指摘 「移民」と日本人

4月5日放送のNHK・ETV特集「フェイクとリアル~川口 クルド人 真相~」が偏向報道の批判などで再放送が延期された問題で、同局が1日に再放送した番組に当事者らから批判の声が相次いでいる。主な変更点が街宣・デモ団体が弁護士を通じて抗議した主張部分だけだったため、「弁護士をつければNHKは言うことを聞く」が悪しき先例になりかねないとの声も出ている。
再放送は微修正のみ
「最後まで私には取材はなかったが、一つ参考になったのは、弁護士を立てるとNHKは言うことを聞くようだということ。これが先例になりかねない」
複数のX投稿を取材なく使用されたというフリー記者、石井孝明氏はこう話した。再放送での主な変更点は、当初の番組を見て弁護士名の抗議文を内容証明で送り、新たに取材を受けた街宣・デモ団体の主張を新たに挿入するなどした程度だったためだ。
石井氏は「再放送は微修正のみだった。NHKは反省の念はなさそうだと感じた」。
一方、この団体の代表、渡辺賢一氏は「デモ行進では『不法滞在は犯罪だ。即刻強制送還せよ』と繰り返したのだが、番組では『即刻強制送還せよ』の部分だけ切り取られた」と主張。
「排外主義のイメージを植えつける悪質な印象操作だと思った。再放送でも変わっておらず、これが公共放送のやることかと思った」
「FCクルド」の問題はスルー
埼玉県議会でクルド人問題を取り上げてきた諸井真英県議は「『取材を深める』としながら、再放送でも圧倒的にクルド人やクルド人擁護の弁護士、大学研究者の話ばかりで、クルド人から被害を受けている川口市民や、この問題に取り組んでいる地方議員、ジャーナリストに取材なしでは、まったく公平性に欠ける番組と感じた」。
同番組は、「クルド人」という言葉を含むSNS投稿を時系列で解析し、投稿が増えた時期の中心的な投稿内容の真偽を検証したとするものだが、諸井氏は埼玉スタジアムで3月、同県川口市のサッカーチーム「FCクルド」が無許可で旗を掲げようとしたトラブルに触れていないと指摘。
「この事案を取り上げると、クルド人側が自分たちの非を『人種差別だ』として問題をすり替えたことがわかってしまうので、都合が悪かったのだろう」と話し、こう述べた。
「クルド人が被害者で日本人側が差別者という構図を最初から作って制作した番組であり、とても日本の公共放送とは言えない。これで国民から受信料を徴収するなど、恥ずかしくはないのか」
「出稼ぎ」問題ミスリード
番組では、川口市内の解体資材置き場(ヤード)で働くクルド人男性が3人、カメラに向かって次々に「在留カード」を掲げる場面があり、そのうち2枚は「特定活動」の在留資格だった。
クルド人が難民申請中に多く与えられる資格で、俗に「難民ビザ」と呼ばれるが、あくまで申請手続きのための在留許可。その間の生活手段として例外的に就労できる資格にすぎないが、そうした背景にはまったく触れなかった。
難民認定制度の悪用が指摘される問題に唯一触れた場面は、クルド人ではなく、トルコ人男性がクルド人をかたって難民申請しているとの証言だった。
入管関係者は「クルド人以外の証言を強調することで問題をミスリードしている。クルド人なら難民認定されるかのような印象を与えかねず、番組全体として偏向した制作意図と言わざるを得ない。われわれとしては粛々と法の運用を進めたい」と話した。
昨年6月の改正入管難民法施行により、難民申請が3回目以降の人を強制送還できるようになっており、鈴木馨祐法相は「難民審査のスピードアップを図る」としている。