こどもの日特集 スマホがあれば暇はないこどもたち SNSでのいじめ・犯罪被害防ぐために親や大人ができることは?自傷行為的な使い方も…

青少年のインターネットの平日1日の平均利用時間が年々増加するなか、SNSをめぐる誘拐・児童ポルノなどの被害や見つかったときに言い逃れできるようなギリギリの悪口によるいじめも…。こどもを取り巻くSNSの現状と、被害を防ぐために大切なことを千葉大学教育学部長・藤川大祐教授に聞きました。
こども家庭庁によりますと、昨年度、青少年のインターネットの平日1日の平均利用時間は、中学生では5時間を超え、高校生では約6時間19分で年々増加傾向にあります。千葉大学教育学部長・藤川大祐教授は、こどもたちが長い時間をゲームやSNSなどに使う理由について、利用者が時間を多く使うようなサービスの設計が影響していると分析します。
「ゲームははまりやすい構造があって、うまくいかないと次はうまくいくかもしれないと思うし、うまくいったら気持ちよくて、もう1回やりたくなる。動画はレコメンド機能がきいていて、ある動画を見ているとその人の傾向に合わせて次々と動画を見せてくれる。TikTokやYouTubeもそうですが、次の候補に挙がったものがやはり気になってしまい、長時間になりますよね。SNSは肯定的な反応があったりするとうれしいというちょっとゲームっぽいところもある」
「テレビしかなかった頃はテレビ漬けと言われていましたが、見たい番組が終わってしまえば暇。しかし、今はコンテンツの量が桁違いなので時間のコントロールはとても難しくなった。スマホさえあれば本当の退屈はないんです」
藤川教授によると、SNSや動画について単なる時間つぶしのために長時間の利用になる子も多く“もったいない”時間の使い方に。そのようなとき、親など周囲の大人ができることについては。
「ああしろこうしろと言っても逆効果。“あなたは”と言うとそれは押し付けになるので、当然反抗期とかのこどもは反発する。親とけんかして一晩帰ってこないとかは本当に危ないので。そういうことでなければ、『心配してますよ、何か悩みがあったら言ってね』ということを伝えるくらいでいい」
「本人だってうすうすわかっているので、親も心配しているし、自分でもまずいと思えば、一時的には依存気味に見えても自分で調整してなんとかなる場合も多い」
ほかに課題になっているのが「いじめの被害」。文部科学省の調査によりますと、いじめの認知件数のうち、ネットが関係するいじめの割合は、2023年、高等学校で約15%、中学校で約10%という状況です。実際の学校現場で多いと感じるのは、LINEのステータスメッセージなどでの「誰のことかわからないけど、読む人が読めばわかるような際どい悪口」だといいます。
「例えばInstagramのストーリーズ。24時間で(投稿が)消えてしまうので。LINEのタイムラインも、発信者が消してしまえば証拠が残らないが、たとえ残ったとしても言い逃れができるようにするタイプの悪口みたいなものが結構多いと現場でよく聞きますね」
「今の気持ち一言みたいなところに、残りにくいように書くんですよね。あれは本人が書きかえてしまえば、他の人がスクリーンショットを撮ってないかぎり残らないので、そこに「死ねばいいのに」とか書くんですよ。誰のことかは言わないで逃げられないようにするんです。ほかにもプロフィル画面の写真に仲良し4人組なのに3人しか写ってない写真をのせたりとか。いじめじゃないんだというふうに言い逃れができるものが多い」
このようないじめをめぐって必要とされる対応については。
「あなたにそういう意図はなかったかもしれないけど、その紛らわしいことを書いて、結果的に人を傷つけるとしたらそれは書き方が悪いんだから反省しなきゃいけないというぐらいの指導はしてほしい」「被害者が苦痛を覚えたらいじめなので、やっぱり誰かが苦痛を覚えるっていう事態を避けましょうということを基本的なゴールにしていかないといけない」
加えて問題になっているのが犯罪被害について。警察庁によりますと、SNSを通じて面識のない被疑者と被害児童が知り合い、交際したり知人関係などに発展する前に、被害にあった児童は2024年1486人。なかでも写真を撮って送る自画撮り被害などを含む児童ポルノの被害は400人を超え、誘拐や不同意性交、不同意わいせつなどの犯罪も450人を超える状況です。
「今、犯罪被害が多いのはXとInstagram。基本的に自由に投稿できて、複数アカウントが持てて、そうすると援助交際のアカウントとかもみんな作れてハッシュタグで検索とかができるので、どこどこで会いたいみたいなことでも検索できて、つながりやすいわけだから、当然犯罪が起きやすい」
そのような状況のなか、Instagramで始まった、18歳未満のこどもには一定の利用制限がかかるティーンアカウントの仕組みについては、「友達同士じゃないとメッセージは交換できないなど、簡単には知らない人とつながらない。これは(こどもを守るための)一つの答え。今までのように野放しになっている状態を改めてくれたことは大きな前進だ」といいます。
しかし、現在はティーンアカウントのような仕組みが少ない状況。被害を防ぐためには、まず「知らない人と会わないこと」「写真を送らないこと」が大事だといいます。その上で大切なことが…
「法律を知ること。相手が犯罪的なことをやろうとしているのだったら、それは絶対信じてはいけない。犯罪でもいいでしょということはあり得ないわけですから。例えば、保護者の同意なしに、家出をした未成年を泊めたら誘拐罪になるということを(こどもたちは)あまり知らない。罪になるのに泊めるということはその人、犯罪者で危ないよねと」
「あと、児童ポルノは製造すること自体が犯罪なので、わいせつな写真撮ってと言ったらそのこと自体が犯罪。誰にも渡さないからと言ったとしても、自分の性的好奇心を満たすために持っていることも犯罪なんですよね。そういうことを教えれば、あなたが言ったことは犯罪しようと言っているんだよねという話になる。法律をよく知らなくて、何となくその場の雰囲気で流されてしまうことはまだまだ多いので、そこは改善の余地がある」
一方で、「自傷行為的に、危険だとわかっていながらあえてリスクをとり、SNSで知らない大人とつながろうとする子が一定数いる。こういう子たちをどう守るかというのがなかなか解決していない」
「(こどもたちにとっての)安全な居場所を探さなきゃいけない。だから中高生の居場所みたいなものが足りないっていう問題は多分、潜在的には大きい。何か習い事とかやっていれば、そういうところが居場所になったりすることもあるが、うまく見つけられないとネットで危ないところに行くか、リアルに危ないところに行くかになってしまうので、危ないところに行く前に、信頼できる大人に相談するということができればいいと思っている」
SNSは使い方によっては、同じ思いを持っている人とつながるなどこどもたちの世界が広がる利点があるツールでもあります。SNSなどによる犯罪被害からこどもを守るためには、SNSそのものの対策だけでなく、相談したことが報われる、こどもたちが相談しやすい環境やこどものたちの居場所も求められています。