岩手県釜石市の沖合で8日、クジラの死骸が漂流しているのが見つかった。釜石海上保安部は腐敗による「ガス爆発」の恐れがあるとして、周辺を航行する船舶に対し、近づかないよう異例の警戒情報を発令した。9日午前の時点でクジラの姿は見えなくなったが、まだ漂流している可能性があるとみて引き続き警戒を呼び掛けている。
海保によると8日午後2時15分ごろ、釜石市の南東約3キロの沖合で、クジラの死骸が漂流しているのを巡視艇「きじかぜ」が発見。体長は約10メートルあり、腹部だけが海面から浮き上がっていた。腐敗が進んでガスが充満し、破裂する危険があるほど膨張していたという。
このため、釜石海保は8日午後3時20分に航行警戒情報を発令。9日午前9時ごろから発見場所の周辺海域を捜索したが、クジラは見つかっていない。船舶の航路だけでなく、定置網や沿岸に漂流する可能性もあり、「危険なので絶対に近づかないでほしい」と注意を呼び掛けている。
クジラの死骸は腐敗によって体内で発生したメタンガスが蓄積し、解体作業中などに破裂することがある。個体が大きく、ガスの発生量も多いため、破裂現象を「クジラの爆発」と呼ぶこともある。
日本鯨類研究所によると、釜石沖で見つかったクジラは腹部のしま模様などの特徴からヒゲクジラの仲間とみられる。公開情報だけで個体名を判別するのは難しいという。日本近海では年に2、3回、クジラの破裂の恐れによる航行警戒情報が出ており、同研究所は「体内からガスが抜けて海に沈んだ可能性もあるが、まだ漂流しているのであれば、危険であることに変わりはない」としている。(白岩賢太)