コメ高止まりで自民に危機感、濃くなる焦りの色「価格下がらぬまま参院選突入なら…」

自民党がコメの価格高騰対策に注力している。政府備蓄米を放出しても流通の停滞で価格が高止まりし、国民生活を直撃しているためだ。物価高などを受けた経済対策の目玉は乏しく、高騰が続けば夏の参院選への打撃は避けられない。政府と一体で流通円滑化に取り組む構えだが、危機感は日増しに強まっている。(谷口京子、鷹尾洋樹)
「なるべく早く、迅速に打てる対応を政府と一緒に検討していきたい」
自民の小野寺政調会長は14日、備蓄米を保管する埼玉県内の倉庫を視察後、記者団にこう述べ、対策を急ぐ考えを示した。
農林水産省によると、スーパーで販売されたコメ5キロ・グラムあたりの平均価格(4月28日~5月4日)は、前週より19円安い4214円と約4か月ぶりに値下がりしたものの、高止まりが続く。3月から放出が始まった備蓄米は計3回の入札で31万トンが落札されたが、スーパーなどの小売業者まで十分に流通していない。
背景には、卸売業者の段階で精米や袋詰めなどに時間がかかって供給が滞っていることがあるほか、備蓄米の入札に参加する業者の条件が障害になっているとの指摘もある。現状では、放出した備蓄米と同じ量のコメを原則1年以内に買い戻すことが条件となっており、大手業者以外は参加しづらい構図となっている。
このため、政府・自民は、玄米のまま流通できるようにしたほか、入札条件を緩和する方針だ。
石破首相(党総裁)も周囲に「『コメの値段を下げてくれ』というのが世の中の声だ」と語っており、自民はコメの価格抑制に向け、さらなる対策検討を加速させている。
農林部会は14日、党本部で幹部会合を開き、入札条件緩和などの具体策について協議した。元農相で農水族の代表格である森山幹事長も13日、都内で開かれた全国農業協同組合中央会の会合に出席し、備蓄米の円滑な流通に協力を呼びかけた。
コメの供給不足が価格高騰の一因との指摘から、政府内では米国産のコメの輸入を拡大させる案も浮上しており、農水族としては価格引き下げに注力して輸入拡大を阻止し、自民の有力な支持基盤の農業票を死守する思惑もある。
参院選が近づくにつれ、党内の焦りの色は濃くなっている。参院選前にとりまとめる経済対策で目玉を探しあぐねているためだ。自民関係者は「コメの価格は、物価高にあえぐ国民生活の象徴だ。下がらないまま参院選に突入すれば、悪影響は避けられない」と吐露した。