特殊詐欺の電話を人工知能(AI)で判別するシステムを共同開発している兵庫県尼崎市と富士通、東洋大は15日、市内の高齢者宅で実証実験を重ねた結果、システムが詐欺を見抜ける精度が8割を超えたと発表した。富士通は社内で製品化の検討を始めたという。
3者はAIを活用した特殊詐欺の被害防止システムの研究、開発を2022年に始めた。23年には、電話で会話中の高齢者の脈拍や呼吸数を計測し、緊張や不安といった「心理的負荷」を測定するカメラとセンサー付きの「判別装置」を開発。詐欺に遭っている時のデータをAIに学習させた上で、24年11月、市内の高齢者宅22戸の固定電話近くに設置して、実証実験を行った。
実験では、特殊詐欺の手口を模倣する生成AIシステムが、電話で市役所職員を名乗り、滑らかなAI音声で「還付金があるので10万円を返したい」「本人確認のために生年月日を教えて」などと提案。高齢者の「どうすれば受け取れるか」などの質問に臨機応変に答えつつ、判別装置が生理反応のデータを収集し、高齢者が電話にだまされているかどうかを判定した。
実験後に高齢者に種明かしをし、詐欺の電話と気づいていたか否かを聞き取ると、システムは82%の精度で、高齢者がだまされているか気づいているかを的中させたという。詐欺の可能性が高いと判定すれば、家族のスマートフォンに「親が詐欺の電話を受けている」と自動通知するシステムも開発済みで、3者は「実験データを生かし、製品化へ向けた検討を進めていく」としている。