全国の警察が昨年1年間に相談を受けたストーカー事案のうち、GPS(全地球測位システム)機器や「紛失防止タグ」で居場所を特定されたとの申告が計883件に上ったことがわかった。警察庁が5日、集計結果を初めて公表した。特に紛失防止タグの悪用が急増しており、同庁は法規制を検討している。
警察庁によると、昨年の警察へのストーカー事案の相談件数は1万9567件(前年比276件減)で、相談者の約9割が女性だった。年齢別では20歳代が最多の35%で、30歳代(21%)、40歳代(17%)と続いた。
このうち、同庁がGPS機器や米アップル社の「AirTag(エアタグ)」などの紛失防止装置で居場所を特定する行為に関する被害相談を分析した結果、昨年は883件で前年(682件)の約3割増だった。紛失防止タグはこのうち370件で、前年(196件)の2倍近くに急増した。
2021年に改正されたストーカー規制法では、相手の車や所持品に無断でGPS機器を取り付ける行為などを禁じており、この規定に基づく昨年の摘発件数は39件に上った。
だが、タグの近くを通行した他人のスマートフォンを介して位置を送信する仕組みの紛失防止タグは、同法の規制対象外になっている。昨年2月には、北陸地方の女性から「車に取り付けられた」と相談を受けた警察が、つきまとい行為を繰り返したとする同法違反容疑で知人の男を逮捕した。
企業側は不正対策として、紛失防止タグを仕掛けられた被害者のスマホにタグと一緒に移動していることを通知する仕組みや、持ち主から離れたタグから自動的に音が鳴る機能を導入している。だが、悪用は続いており、警察庁は紛失防止タグを規制対象とすることを視野に、同法改正の検討を進めている。