地面師グループ、ウソの借用書で住民票を取得…ミナミの不動産巡り14億5000万円詐欺容疑

不動産会社の代表になりすまし所有物件の虚偽取引で約14億円を詐取したとして「地面師」とみられる男らのグループが逮捕された事件で、男らが代表に金を貸したとする偽の借用書を役所に提出し、代表の住民票の写しを取得していたことが捜査関係者らへの取材でわかった。大阪府警は、住民票の情報を悪用して不動産会社の登記を変更し、代表を装っていたとみている。
グループは、同府東大阪市の会社役員の男(52)(詐欺容疑などで逮捕)、住所不詳の男(24)(電磁的公正証書原本不実記録・同供用などの容疑で逮捕)ら。問題の物件は大阪・ミナミの東心斎橋や道頓堀、宗右衛門町にあるビル3棟と各土地で、70歳代の女性が代表を務める大阪市中央区の不動産会社が所有していた。
捜査関係者らによると、会社役員の男らはまず、代表に数十万円を貸しているとするうその借用書を代表が住む同市生野区役所に提出し、住民票の写しを不正に入手。住民票の個人情報を基に、代表名義の運転免許証を偽造し、昨年1月、住所不詳の男が不動産会社の代表に就任したとする虚偽の登記変更を大阪法務局で行ったという。
住民票は住民基本台帳法に基づき、債権回収や相続、訴訟など正当な理由がある場合、本人以外の第三者も取得できる。
会社役員の男は同2~3月、別の不動産会社2社にミナミの物件の売却を持ちかけ、計約14億5000万円をだまし取った疑いがある。住所不詳の男は2社との交渉時、不動産会社の代表を装っていたという。
住所不詳の男は調べに「借金があり、返済に困っていた」と供述。オンラインカジノで数百万円の借金があったといい、府警は、知人を通じて会社役員の男を紹介されたとみている。
繁華街に近く、魅力的な物件だと感じた…

今回の事件の被害業者とは別に、ミナミの物件の購入を検討していた大阪市城東区の不動産会社の男性取締役が9日、読売新聞の取材に応じた。物件を所有する不動産会社の代表から「地面師による詐欺だ」と聞かされたという。
付き合いのある不動産業者から「ミナミの物件が三つで約15億円で売りに出ている」と聞いたのは昨年2月。繁華街に近く、魅力的な物件だと感じ、購入を検討した。
登記簿などによると、住所不詳の男がこれらの物件を所有する不動産会社の代表に就任した後、本来の代表の女性が不正登記に気付いて法務局に相談。当時、再び代表に就任していた。
この代表の女性にミナミの物件について問い合わせたところ、「売りには出していない。勝手に登記を変えられた。弁護士に相談している」との説明を受けたという。
取締役は逮捕された男らとの面識はなかったといい、取材に「まさか地面師詐欺だとは思わず、驚いている」と話した。