SNSで一人歩き…“独身税”って本当? 三原じゅん子大臣「間違っている」 専門家「政府予算は先進国トップクラスに」

SNSで“独身税”という言葉が取り上げられ、政府の子育て支援策をめぐって反発も起きています。「独身層には恩恵がない」という声に対し、三原じゅん子大臣は否定しました。夏の参院選が迫る中、インパクトの強い“独身税”の表現が適当なのか考えます。
藤井貴彦キャスター
「6月22日に投開票となる東京都議会議員選挙と、夏の参議院議員選挙が迫っています。日本テレビのニュース番組では、『投票前に考える それって本当?』と題して、選挙の際にあふれる様々な情報とどう向き合っていくべきか、シリーズでお伝えしています」
「今回は、最近(SNSで)トレンドになっている“独身税”についてです。三原じゅん子・こども政策担当大臣は10日、『独身税と言い換えることは間違っている』と述べました。独身税と言われたものは、何なのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ報道局特別解説委員
「独身税などと反発も出ているのは、政府が進めている『子ども・子育て支援金制度』のことです。こども家庭庁は、子育てに関する負担を軽減し、少子化トレンドの反転につなげていく制度としています」
「しかし来年春から徴収が始まるのに、子どもがいない独身層には恩恵がないなどとして、SNSには『独身が何か悪いことした?』『若い未婚の子がよけい結婚できなくなる』『独身にもリターンがほしいです』といった声が上がっています」
藤井キャスター
「独身税という言葉からイメージすると、独身の方だけ負担が増える税金が取られるのですか?」
小栗委員
「そういうことはありません。子ども・子育て支援金は、独身の人たちや子育て世帯、高齢者や企業も含めて、全世代の人たちが子育て世帯を支えることで成り立つ制度です」
「具体的な負担額は、私たちが毎月払っている健康保険料に上乗せされる形です。例えば、中小企業に勤める会社員でおしなべると、2026年度に月400円程度、2027年度には月550円程度、そして満額となる2028年度からは月700円程度が上乗せされるということです」
「これで、『異次元の少子化対策』として決めた約3兆6000億円の支援策のうち、1兆円程度をまかなおうとしています」
藤井キャスター
「決して少ない額ではありませんが、このお金を使ってどんなことをやろうとしているのでしょうか?」
小栗委員
「例えば、児童手当の所得制限撤廃などや妊娠・出産時の10万円の経済支援、男女で育休を取得した場合に給付を手取りの実質10割にする支援、といったメニューが並びます」
「三原大臣は独身税という批判に対して、『いずれ子どもは社会保障の担い手になっていくことから、独身や子育てを終えた人を含め、すべての世代がこの制度のメリットを受ける』と強調しています」
「確かに全世代から徴収するので独身税ではありませんが、私たちみんなの負担増になることは間違いありません」
長濱ねるさん(俳優・『news zero』火曜パートナー)
「未来を担う子どものために必要なことだと思います。ただ、現在の物価高などすでに生活の負担が大きい中で、これ以上増えるのかと不安な気持ちにもなります」
「今回、独身税という言葉が一人歩きしたのには、政治に対する不信感を持っている方が多いことも関係があるのではないかなと思いました」
藤井キャスター
「出生率の低下が止まらない状況、少子化のトレンドを反転させることはできそうなのでしょうか?」
小栗委員
「少子化問題を研究している京都大学大学院の柴田悠教授は、この子ども・子育て支援策だけでは出生率が0.1増える程度で、これまで下がってきたカーブが緩やかになるだけだと考えているそうです」
「ただ、子育て支援に割く政府の予算水準が、これで先進国ではトップクラスになる。このことは重要で、うまく国民に伝えていく必要があると指摘していました」
藤井キャスター
「今回、独身税という言葉がSNSでも取り上げられてきましたが、参院選が近づいている中、インパクトの強い言葉がこれからさらに増えてきます。ぜひ一度、内容を確かめた上でご自身のスタンスを確立していただくのがいいと思います」
「ただどんな形にせよ、国が負担を求めるのであれば、きちんと出口を見据える政策を提示できるかが最も重要です。その一方で、人口の減少は国力の低下につながります。どんな人にも関係のある内容であることも忘れてはいけません」
(6月10日『news zero』より)