コメ不足の裏側で急増する「外国人農家」を直撃。“ギリギリの利益”でも年商5億円を稼ぐ中国人の実像

日本各地の農地が多国籍化している。農林水産省によると、23年に在日外国人と思われる219人が計60ヘクタール、外国法人20社が計30ヘクタールの農地を取得。 少子高齢化が顕著で働き手の少ない地方では、自治体主導で国際交流協定を取り付けるなど、外国人材の確保に積極的だ。出入国在留管理庁の資料によれば、全国の在留外国人数はコロナ禍以降、年10%以上のペースで増加の一途をたどり、24年末時点で全国の在留外国人数は約376万人にのぼるという。業種でいえば製造業が多いが、若年層の流出が夥しい農業もご多分に漏れず。 昨今騒がれているコメ不足にしても、その要因は長年の減反政策や気候変動など多岐にわたるが、供給不足の大きな理由に農業従事者の高齢化による労働力不足も大きい。日本で農業をやる外国人の増加は、日本の食にとって救いとなるのかーー増え続ける外国人農家を直撃した。 ◆外国人農家は日本の希望? 外資規制なしに不安の声も 栃木県南部で「北海農場」を経営して9年目となる、中国出身の范継軍さん(55歳)。真っ赤な文字で看板が掲げられたビニールハウスの数、実に100棟近く。 ここで栽培したパクチーや葉ニンニクなどの野菜を自作アプリを通じて、全国の中国料理店や家庭に販売している。 外国人でも「経営・管理ビザ」を取得した上で条件を満たし、農業委員会の許可を得れば農地の取得が可能だが、実際にはハードルが高く、借地で行う人が多いとみられる。范さんもそのうちの一人だ。 山東省に生まれた范さんは大学を卒業後、国営のコンピュータ企業に就職。1998年、IMAGICAグループの日本法人に転職し4年後に独立、ソフト開発会社を立ち上げた。 「農業はずっと頭にありました。農家の息子ですから。IT業界で働きながらも、畑や田んぼを見ると心が落ち着いた」 思いが募り、5haの農地を借りて日本ではなじみの薄い中国野菜の生産に乗り出した。 「今や在日中国人は約100万人で、“ガチ中華店”も急増している。しかし、中国野菜は輸入が難しい。だったら自分で作って売ろうと考えました」 ◆休耕地の増加で外国人が参入しやすく 読みは見事に的中し、今では生産が追いつかないほどの人気ぶりだ。最初こそ失敗が続いたものの、3年ほど前からは黒字化し、年商は5億円に上る。 ただし、人件費や管理費を差し引けば「ギリギリの利益」。20人ほどいる従業員の国籍は中国、ベトナム、ネパール、日本などさまざまだ。