日本の交通ルールを十分に理解しているとは言い難い外国人ドライバーの事故が相次いでいる。運転の知識や技能を見極めたうえで、免許を交付する制度に改めるべきだ。
外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外国免許切替(外免切替)」制度の厳格化を警察庁が検討している。
外免切替は1933年に導入された。当初は、海外で運転免許を取得した日本人が帰国後、スムーズに日本で車を運転できるようにするのが主な目的だった。
90年以降は外国人の利用が上回り、訪日客や海外からの労働者の増加もあって、昨年は6万9283人と全体の94%を占めた。ベトナム人と中国人が特に多い。
海外では右側通行の国が多く、信号の仕組みや歩行者への配慮の度合いなども日本とは異なる場合がある。日本人が海外で運転する時と同様に、外国人もルールの違いに戸惑っているはずだ。
外国人ドライバーによる事故は増加傾向にある。昨年は7000件を超えた。最近、三重県で起きた新名神高速道路の逆走事故や埼玉県の小学生ひき逃げ事件では、いずれも外免切替制度を利用した外国人が運転していた。
現行制度には「手続きが簡単過ぎる」との指摘が根強い。交通ルールの知識を問う試験は○×形式で10問中7問を正解すればよく、合格率は9割を超えている。
滞在先のホテルや知人宅を住所地にすれば、短期滞在の観光客でも申請できる。日本の交通ルールを十分に理解できていない外国人に、日本の免許証を交付する形になっているのではないか。
ベトナムや中国は「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」に加盟していない。そのため約100か国の加盟国で運転できる日本の国際免許証を目当てにした乱用的な申請もあるとされる。
海外で日本の免許証を持った外国人の事故が多発するような事態になれば、日本の運転免許制度への信頼まで揺らぎかねない。
警察庁は今後、○×試験の問題数を増やし、実車を走らせる技能試験も厳しくする方針だ。観光客については、申請時に住民票の写しの提出を原則とすることで制度の対象から除外するという。
人口減が進む日本社会にとって外国人労働者はもはや不可欠な存在だ。免許証の有無は職業の選択や収入の多寡にも直結する。今後は、外国語併記の道路標識を増やすといった外国人の目線に立った対策も必要になるだろう。