参院選の前哨戦と位置づけられ、22日に投開票された東京都議選(定数127)は23日未明、全議席が確定した。自民党が、過去最低だった2017年の23議席を下回る21議席と歴史的大敗を喫して第1党の座を失い、小池百合子都知事が特別顧問を務め、今回31人が当選した都民ファーストの会が、17年都議選以来の都議会第1党に復活した。自民党は都議会でも発覚した裏金事件への批判に加え、物価高対策での国民一律2万円給付で「ばらまき」指摘を受ける石破政権への批判も影響した可能性がある。国民民主党、参政党が都議会に初の議席を獲得した。参院選と都議選が12年に1度重なる「巳(み)年選挙」は、波乱の幕開けとなった。
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事前の各社情勢調査で、第1党をうかがう勢いと指摘もあった自民党が大苦戦を喫し、まさかの過去最低議席となった。自民党東京都連の井上信治会長(衆院議員)は22日夜、議席が確定する前のNHKのインタビューに「非常に厳しい結果だと受け止めている。我々の訴えが、なかなか届かなかったということで、大変残念に思います」と、厳しい表情で語った。
自民大失速の要因の1つは、国政に続いて都議会自民党でも発覚した政治資金パーティーをめぐる裏金問題とみられる。今年1月、政治資金収支報告書への不記載が分かった26人が公表され、幹事長経験者6人の公認は今回、見送られた。街頭演説の際に「裏金」などのヤジが飛び、陳謝した候補もいる。最近の有権者の関心は政治資金問題よりも物価高に移っていた側面もあったが、やはり有権者は自民党の裏金問題を忘れていなかったことの証左ともいえる。
一方、その物価高対策では、消費税減税を求める声も多い中で石破茂首相が示した、国民に一律2万円を支給する方針に「バラマキ」批判も根強い。石破政権の支持率は依然低迷。小泉進次郎農相による政府備蓄米放出などの政策を受け、やや上向きになった調査もあるが、今回の自民党の大敗は、石破自民党に対する「直近の民意」が反映された結果ともいえる。
実際、各党トップが登場した告示日の第一声に、石破首相の姿はなかった。もし議席を減らし敗北した場合、首相の責任論に直結するのを避けた側面もあるとみられる。首相は最終日の21日に葛飾区と墨田区の2カ所で街頭演説したが、集まった聴衆の熱気はあまり高くなく、自民党への冷めた雰囲気も漂った。
都議会自民党は、小池都政を公明、都民ファーストの会とともに支える「知事与党」の一角。かつて都知事選立候補をめぐって対立した小池氏との距離は縮まり、小池氏も最終日に一部自民候補の激励に入るなどしたが、選挙に強い「小池人気」に乗ることもできなかった。
都議選と参院選が重なる12年に1度の「巳年選挙」では、都議選の結果が参院選の結果に直結してきた。実際に直近の2001年、2013年は都議選で自民が圧勝し、その後の参院選でも圧勝した。今回、有権者の厳しい審判を突きつけられた自民党は今後、まもなく公示となる参院選に向けた戦略の練り直しの必要が生じる可能性がある。自民党は大激戦となる東京選挙区に現職と新人の2人を擁立するが、参院選という夏の一大決戦全体へ向けても、大きな不安を残す結果に終わった。
今回の都議選の投票率は47・59%で、前回21年の42・39%を5・20ポイント上回った。