国が2013~15年に生活保護費の基準額を引き下げたのは、健康で文化的な生活を保障した生活保護法に違反するとして、受給者らが国と自治体に減額処分の取り消しや損害賠償を求めた2件の訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は27日、減額処分の取り消しを命じる判決を言い渡した。
最高裁が国による生活保護費の引き下げを「違法」と判断するのは初めて。原告らが国に求めた損害賠償請求は棄却した。
国は08年のリーマン・ショック後、物価や賃金が下がっているとして、生活保護費のうち、食費など「生活扶助」の基準額を最大10%引き下げる改定を実施。13~15年の3年間で総額約670億円を削減した。
14年以降、受給者約1000人が全国29地裁に同種訴訟を起こし、高裁判決は引き下げについて、「違法」7件、「適法」5件と判断が割れていた。上告審では、「適法」として原告側の請求を棄却した23年4月の大阪高裁判決と、「違法」として減額処分を取り消し、損害賠償も命じた同11月の名古屋高裁判決の2件が審理の対象となった。