「家族にも付き合っていることはオープンにしていました。彼女の地元のことや親御さんのことを、包み隠さず話してくれていました。なにより『いい子だ』って言っていてね……。いったいあの日、なにがあったのか本当にわからない」──動揺を隠せない様子でそう語ったのは安藤陸人容疑者(20)の祖母。安藤容疑者には愛知県豊田市のアパートに住む東川千愛礼(ちあら・19)さんを殺害した容疑がかけられている。祖母は取材中、孫が起こした悲劇を何度も悔やみながら、交際中だったという2人の関係性や容疑者の“素顔”について明かした。
事件の始まりは6月29日、東川さんの親族が「娘と連絡が取れない」とアパートの管理会社に連絡したことだった。同日14時半頃、管理会社から安否確認を依頼された愛知県警がこのアパートに駆けつけたところ、玄関先の廊下であおむけに倒れている東川さんが見つかった。地元紙記者が解説する。
「発見時、東川さんは衣類を身につけておらず、胸に刃物のようなものが刺さった状態で倒れて死亡していた。遺体には胸を中心に複数の刺し傷が確認され、部屋には鍵がかかっていなかったようです。東川さんは28日21時45分から翌日午後2時半頃までの間に殺害されたとみられています」
県警はこの事案を殺人事件として捜査。被疑者として名前があがったのが、交際相手の安藤容疑者だった。
「男は事件後、車で県外へ逃亡していましたが、京都府内の高速道路で単独事故を起こし、警官に保護された。その後、任意で聴取したところ『間違いないです』と犯行を認めました。捜査関係者によれば、2人は職場が同じだったことから出会い、交際関係に発展。ことし春頃から付き合っていたとみられています。
その後の捜査では、凶器として使われたのは東川さん宅にあった包丁で、遺体が発見された廊下以外の場所にも血痕があったことも新たにわかっています。県警は男が東川さんを、強い殺意をもって突発的に殺害した可能性を視野に調べを進めているようです」
まだ高校を卒業して間もない、若い男女の間に何が起こったのか。
東川さんが住んでいたアパートの最寄り駅から2駅離れた閑静な住宅街にある男の実家を訪れると、冒頭の祖母が事情を話した。
祖母が告白した容疑者の“挫折と悲劇”
「陸人とは同居していて、最後に会ったのは28日の朝です。陸人は仕事でいつも7時頃に家を出るんですが、その日も特に変わった様子もなく家を出て行きました。