3日に震度6弱を観測した鹿児島県十島村の悪石島には診療所が1カ所あるものの、常駐する医師はいない。この島で20年以上、巡回診療を続けてきた鹿児島赤十字病院(鹿児島市)の永井慎昌(しんすけ)副院長(64)が4日、毎日新聞などのオンライン取材に応じ、島民のメンタルケアの必要性を訴えた。
悪石島は鹿児島市から直線距離で約250キロ。永井さんは6月24日にフェリーで島へ入った。鹿児島赤十字病院は月1回、島に医師を派遣している。島の人口は6月末時点で89人。2002年から訪問を続ける永井さんは「ほとんどの島民の顔と名前は一致している」という。今回も定期診療の一環で訪問した。
悪石島を含むトカラ列島では6月21日以降、約2週間にわたり揺れが続く。永井さんが入る前日の23日には震度1~4の地震が計183回発生。平均して約8分に1回もの頻度だった。24日の診療中も緊急地震速報が鳴り、永井さん自身、震度4の揺れに身をすくめたという。
診察で地震による直接のけがや急病はみられなかったが、高齢者の多い島民からは「揺れで夜眠れない」などと不安を訴える声が聞かれた。診療所を出ると、ヘルメットをかぶった子どもたちの姿も目についた。
近年、群発地震を度々経験してきた地域とはいえ、永井さんは「住民は強い不安感を持っている。心と体はつながっており、一般にストレスを常に感じていると、うつ傾向や不眠症が起きてくる」と、島民の心のケアが喫緊の課題と指摘した。
鹿児島赤十字病院は4日夜にも看護師1人を島に派遣する。今後、さらなる医療スタッフの派遣も検討しているという。【高橋由衣】