SNSに溢れる「切り抜き動画」合計動画再生数が一番多いのは“第三者による投稿” 各党の対応は?【Nスタ解説】

党首や候補者の発言を短く編集した動画は日々、SNS上に投稿されていていまや選挙戦を左右するほど影響力が増してきています。誰が、どのような目的で作っているのでしょうか。
SNSに溢れる「切り抜き動画」
日比麻音子キャスター: “切り抜き動画”を見かける方も多いかと思います。公式の会見や演説などを短く編集し、SNSに投稿するというものです。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: “切り抜き動画”はものすごく増えています。元々の会見や演説の一部を切り抜いているので事実は事実ですが、短い言葉でインパクトを出したり、字幕のスーパーを入れたりと、いろいろな工夫がされています。しかし、前後の文脈が気になります。
日比キャスター: 数秒、数十秒の動画が多いですから、短い時間にまとまっているように見え、それで理解した気持ちになってしまうという特徴もあると思います。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 本当ではありますが、奥深いところまでは理解できないというリスクはあります。
選挙×SNS 影響力は? 合計動画再生数を投稿者別にみると第三者が93.5%
日比キャスター: SNSの影響は過去の選挙戦においても出ていました。例えば、2024年7月の「東京都知事選」です。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 2024年はSNSと選挙がクローズアップされ、関心を集めた1年間でした。
「東京都知事選」では、石丸伸二氏がSNSを活用して2位に入りました。2024年11月の「兵庫県知事選」では、斎藤元彦氏が知事に再選しました。
いずれも、本人よりも支持者や様々な人たちによるSNSへの投稿がありました。量がかなり多く、情報の真偽がわからないまま選挙戦に突入し、選挙当日を迎えました。これでいいのかという議論にもなりました。
日比キャスター: SNSは“発信”だけではなく“拡散”や“共有”もできることが大きな特徴の1つです。
選挙戦におけるSNSの影響ですが、2024年の都知事選関連の「合計動画再生数」を投稿者別にまとめると▼政党3.4%、▼候補者3.1%でした。
残りの動画再生数を占めていたのは「第三者」による“切り抜き動画”。93.5%を占めていたということです。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 驚くほど多くの人たちが沢山の動画を作って、アップしているということです。動画制作者はどのような狙いで“切り抜き動画”を作っているのかを考える必要があると思います。ただ見ているだけだと、色々なリスクがあると思います。
日比キャスター: 再生回数と投票率が比例しない現象がありますよね。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 再生回数が多い“切り抜き動画”を一種の情報源として得ていても、投票に行くなどのハードルもあります。多く見られたから、必ずしも選挙の結果に繋がるとは言えません。ただ、相当な影響力を持っていると思います。
日比キャスター: 各党の対応をまとめました。「容認」が3つの党で、「条件付きで容認」が5つ、「その他」が2つとなっています。
【容認】 維新 条件なし 共産 拡散呼びかけ 国民 拡散呼びかけ
【条件付きで容認】 自民 偽・誤情報などは対応を検討 公明 党ガイドラインを順守 立憲 営利目的外のみ可 参政 党へ届け出必要 保守 悪意あるものは削除要請など
【その他】 れいわ 期限内に回答なし 社民 公益福祉に反する場合は対応
今後、ルールの整備はどうなるでしょうか?
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 2024年の都知事選と兵庫県知事選を受けて、SNSの規制について与野党双方で議論となりました。やはり表現の自由の問題や、何を規制したら良いのか・悪いのか線引きがもの凄く難しいです。
公職選挙法の改正により、品位のない選挙ポスターについては禁止されましたが、SNSの発信については今後課題を認識して必要な措置を講じるという目標を明記しましたが、実際に制度化されていない状況です。
日比キャスター: 動画を見ると、誤っていない情報でも、誤った方向に捉えられかねない編集がされているものもありますよね。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 大勢の人たちが、いろんな動機や思惑で動画を投稿しています。中には、再生回数を増やして儲けたいと考えている人もいます。応援したい方であれば、その候補者にとって良い情報ばかり流してしまいます。逆に足を引っ張りたい人であれば、ある政治家の発言を悪意を持って流そうとするかもしれません。
ですので、もともとの動画は事実でも、扱われ方でどのような影響が出るのかについて、見る人は立ち止まって考えるべきだと思います。
参議院選挙 参考にしている媒体・情報の集め方は?
日比キャスター: 参院選で参考にしている媒体を聞いた世論調査の結果があります。
<参院選で参考にしている媒体は> ▼テレビ 31% ▼SNS・動画共有サイト 27% ▼新聞 17% ▼いずれも参考にしない 15% ▼政党・候補者HPやビラ 9%
<世代別参考にしている媒体は> 18~29歳 1:SNS 2:テレビ 30代 1:SNS 2:テレビ 40代 1:SNS 2:テレビ 50代 1:テレビ 2:SNS 60歳以上 1:テレビ 2:新聞
JNN電話世論調査 調査:7月5・6日 対象:全国18歳以上有効回答1010人
SNSを参考にしている世代が幅広いですね。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 50代の方もそうですし、60代の方でも増えています。SNSあるいはYouTubeといった動画共有サイトから様々な情報を得る中で、政治の情報もそこから見る方がどんどん増えている状況です。
南波雅俊キャスター: 実際に街頭演説に行くのと、切り抜きの一瞬を見るのだと印象も得られる情報も全く違います。でも、その印象って投票行動に繋がりますよね。例えば、スマートフォンで候補者の名前を調べると、ホームページを見るだけでも主張もわかるので、情報を一つ一つしっかりと判断して投票に結び付けたいと感じます。
TBS報道局岩田夏弥政治部長: 政治を身近にする、プラスな点がある一方、気をつけて使わなければならないこともまだまだあると思います。
========== 〈プロフィール〉 岩田夏弥 TBS報道局政治部長元官邸キャップ 小渕総理以来、主に政治取材を担当