国土交通省は今年度、南海トラフ地震などの大規模地震により崩れる恐れがある39道府県の高速道路、国道の盛り土計約350か所の耐震化に乗り出す。昨年1月の能登半島地震では高速道路や国道の数十区間で盛り土が崩れ、復旧・復興の遅れにもつながった。国交省は地方自治体にも所管する道路の点検を求め、耐震化を促す。
国交省北陸地方整備局によると、能登半島地震では同半島を縦断する「能越自動車道・のと里山海道」の盛り土155か所のうち、28か所で大規模崩壊が起き、道路が崩れ落ちたり路面が大きく変形したりした。「能登の大動脈」と呼ばれる国道249号でも、18か所の盛り土で崩壊が確認された。
崩れた盛り土の多くは山間部の谷を埋め立てた「谷埋め型」で、地下水が集まりやすく、雨水もしみこんで崩れやすくなっていたとみられる。
能登半島地震を受け、国交省は昨年度、全国の高速道路や国道にある高さ10メートル以上の盛り土約2400か所の点検を実施。その結果、震度6強以上の揺れで崩壊する恐れがあり、対策が必要な盛り土が高速道路で計74か所、国道で計271か所見つかった。北海道が113か所、長野県が20か所と多い。
これらの盛り土について、国交省は今年度から順次、地下水を抜く排水設備を追加したり、盛り土の最下部に砕石を積んだりして崩れにくくする工事を進める。6月には道路の盛り土の技術基準を改定し、地下水対策について明記した。
国交省は都道府県道や市町村道についても、所管する地方自治体に対し、2026年度までに計約5700か所を点検するよう求めている。盛り土を耐震化する際は、国が整備費の最大55%を助成する補助制度を活用してもらう。助成金には25年度予算の4億円を充てる。
国交省幹部は「地方の山間部では、能登同様に盛り土で造られている所も多い。南海トラフ地震などに備え、迅速に対応する」としている。
能登半島地震で盛り土が崩れるなどした高速道路や国道は、地震から1年半がたった今も本復旧に至っていない。
能越自動車道・のと里山海道は、国交省が仮設道路を設けるなどし、昨年7月に全線で通行が再開されたが、崩壊した盛り土の断面がむき出しになっていたり、土のうが積まれたりした箇所が多く残る。崩壊が大規模だったため、道路を設計し直した箇所もあった。
国交省金沢河川国道事務所の担当者は、「能越自動車道・のと里山海道は、まだ路面状況が良くない箇所も多い。盛り土を強化した上で本復旧することが、今後の復興のためには不可欠だ」と語る。