参院選“争点回避”石破自民の思惑外れ…「OTC類似薬」保険外しに患者団体が怒り、反対署名13万筆超

「OTC類似薬の保険外しを公約に掲げている政党があって、本当に大変苦慮しています」──。国の指定難病「先天性魚鱗癬」を患う男性の母・大藤朋子さんは、そう戸惑いを口にした。
自民党、公明党、日本維新の会の3党が合意したOTC類似薬の保険適用除外を巡り、10日、当事者の患者とその支援団体が厚労省に保険適用の継続を求める要望書を提出し、省内で会見した。継続を訴えたのは、全国保険医団体連合会(保団連)とNPO法人「日本アトピー協会」、難病患者の家族たち。
維新が自公との協議で示した「保険外しリスト」には、アトピー患者に欠かせないステロイド外用薬や保湿剤ヒルドイド(ヘパリン類似物質製剤)などが含まれる。肌がウロコのように硬くなり剥がれる先天性魚鱗癬には、大量の保湿剤とステロイド薬が手放せない。
大藤さんによると、昨年7月~今年6月の1年間にかかった薬代は約3万円。OTC類似薬が保険適用除外になれば、薬代は「ざっと計算して年間約82万円」(大藤さん)に上るという。
アトピー協会の倉谷康孝代表理事も患者の費用負担増のリスクを指摘。1回20グラムの保湿剤(ヒルドイドソフト軟膏)を1日2回全身に塗布する場合、保険適用除外によって月1万5290円の負担増につながると主張し、次のような懸念を示した。
「負担増ということは症状が悪くなる方が必ず増える。悪化すれば、3割負担で初月10万円弱の高額医療請求の薬を使う患者さんが増えるのではないかと心配している」
■維新の前原共同代表が内情を暴露
当然、治療継続も困難になる。会見に出席した保団連副会長の橋本政宏医師(内科)は、「市場価格の薬を買える力の有無で治療内容が採用されてしまう」と危機感をにじませ、「医学的に必要な薬は患者さんの懐具合を心配することなく処方できなければいけない」と強調した。
自公維の合意に基づき、政府は6月に閣議決定した「骨太方針2025」にOTC類似薬の保険適用見直しなどに関し〈早期に実現が可能なものについて、2026年度から実行する〉と明記した。しかし、石破自民は参院選での争点化を避けたいのがホンネ。維新の前原共同代表は7日、奈良市内の街頭演説で「(見直しの具体化について)自民党から『参院選が終わってからにしてくれ』と言われている」と内情を暴露した。
アトピー協会と大藤さんがそれぞれ立ち上げた保険適用継続を求めるネット署名は計13万筆を超えた。石破自民の思惑通り“争点隠し”とはいかない。
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