「大阪の方が狙いやすい」次々と県境を越える京都発〝出張型〟ひったくり犯の思惑

「京都より大阪のほうが狙いやすい」。京都府内に住む容疑者が、大阪まできて路上強盗やひったくりをしたとして相次いで逮捕され、こんな供述をしているという。中には京都からトラックにミニバイクを載せて移動し、大阪市内で乗り換えた後に事件を起こしたケースも。かつては「大阪名物」と揶揄(やゆ)されたひったくりだが、近年の認知件数は激減している。どこに「違い」があると認識したのか。
「大阪のほうが、京都の繁華街より酒に酔った状態でバッグを持っている人が多いから狙いやすい」
大阪府警捜査3課が6月に強盗致傷容疑で逮捕した京都府内のいずれも19歳の男2人は、大阪を選んだ理由をこのように供述したという。
2人の逮捕容疑は、2月21日午前2時過ぎ、大阪・ミナミの路上で、20代女性の後ろからミニバイクで近付き、現金約3万円などが入ったかばんを奪った上、女性を転倒させて全治約2週間のけがをさせたとしている。
府警によると、女性が飲酒していたかは不明だが、帰宅中に信号を待っていたところを狙われた。2人は京都市内で2トントラックにミニバイクを積み込んで移動。大阪市内でミニバイクを下ろして2人乗りし、後ろの男が追い抜きざまにかばんを奪っていたという。
あえて府境を越えて事件を起こす事例はほかにもある。大阪までミニバイクで片道1時間ほどかけて移動し、ひったくりを繰り返したとして大阪府警は7月、窃盗容疑などで京都府亀岡市の無職、石橋憂翔(ゆうと)容疑者(20)を逮捕、送検したと発表した。
府警は大阪市中央区や都島区などで計11件(総額約167万円相当)の被害を裏付けて捜査を終えた。府警によると、石橋容疑者は京都を避けた理由を「歩行者専用の繁華街が多く、バイクでは入りづらい。大阪に比べると人通りも少ない」などと供述。女性に狙いを定めており、「バッグに財布やスマートフォンを入れていることがほとんどなので狙いやすい」とも述べたという。
大阪へ移動する際はミニバイクのナンバープレートを折り曲げて防犯カメラに写りにくくしていたという石橋容疑者。盗んだかばんなどの一部はブランド品買取店で転売し、金目のものがなければ川に捨てていたとみられる。
「大阪名物」今は昔…99%近く減少
大阪では一時1日平均約30件も発生するほどひったくりが日常茶飯事で発生。府内のひったくりの認知件数は、ピーク時の平成12年は1万973件に上っていた。ただ、防犯カメラの設置や警察の対策などもあり次第に減少傾向となり、令和2年からは捜査を強化する「大阪重点犯罪」から除外された。
昨年の認知件数は145件。前年から約30件増えたものの、ピーク時の1%程度となっている。
被害に遭わないための対策として、府警はバッグを車道と反対側の手に持ったり、ショルダーバッグをたすき掛けにしたりするのが有効としている。また、自転車の前かごにはひったくり防止カバーを取り付け、ときどき後ろを振り返って不審者がいないか確認することを推奨している。(鈴木源也、木下倫太朗)