演劇、オペラ、舞踊と幅広い分野で活躍した舞台照明の第一人者、吉井澄雄(よしい・すみお)さんが2日、老衰で死去した。92歳だった。告別式は近親者で行い、後日、お別れの会を開く。喪主は息子の哲(さとし)氏。
東京生まれ。高校時代に舞台照明を学び、1953年、東京学芸大に在学していた20歳の時に浅利慶太、日下武史らと劇団四季の創立に参加。照明家として浅利演出の「ひばり」「オンディーヌ」「鹿鳴館」、蜷川幸雄演出の「NINAGAWA・マクベス」「近松心中物語」、三代目市川猿之助演出のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」を手がけた。欧州での仕事も多く、伊ミラノ・スカラ座「蝶々夫人」、独バイエルン国立歌劇場「影のない女」などの照明も担当した。92年には、ロンドンで上演された「タンゴ・冬の終わりに」で英ローレンス・オリビエ賞の照明賞の候補になった。
「俳優がせりふを言う時に気持ちが良くなる照明を」と心がけて作った深みがあり、格調高い照明が登場人物の魅力を引き立てた。
日生劇場、新国立劇場など数々の劇場の建設にも携わった。
日本照明家協会名誉会長。2003年に勲四等旭日小綬章。17年に読売演劇大賞の芸術栄誉賞を受賞した。