三つ子以上の妊婦ら対象の「減胎手術」、大阪大が実施公表…「選択肢の一つとして選べるように」

大阪大病院は、一度に複数の子を身ごもる「多胎妊娠」をした妊婦らの安全のため、胎児の数を減らす減胎手術を実施していることを明らかにした。14日、大阪市内で開かれている日本周産期・新生児医学会で、遠藤誠之(まさゆき)教授らの研究チームが発表した。2024年に国内初の臨床研究として10人の妊婦に手術を実施。研究終了後の今年もこれまで2人に行った。公的医療機関が取り組みを公にするのは異例だ。
臨床研究は24年3月~12月に実施し、三つ子以上の多胎妊娠か、双子で母体に重い合併症がある20~40歳代の妊婦計10人が参加した。流産の可能性が低くなる妊娠11~13週に、妊婦の腹部に針を刺し、胎児の心臓に薬剤を注入した。
術後1週間の母子の状態を調べたところ、全例で減胎を確認。減胎の対象としなかった胎児の生存率は89・5%だった。チームは「手法の確実性は高い」と結論づけた。
ただ、術前、妊婦は抑うつ傾向が強く、術後はやや改善されたものの、長期的な心理的サポートが必要とした。
多胎妊娠は、排卵誘発剤などによる不妊治療に伴い、珍しくなくなっているが、早産や妊娠高血圧症候群などの合併症を発症するリスクが高く、母子には大きな負担がかかる。国内では、長野県の諏訪マタニティークリニックが1986年に減胎手術を実施したと初めて公表したが、その後も、手順や実施後のケアなど減胎手術に関する明確なルールは整備されていない。
阪大では学内の倫理委員会を経て行った臨床研究に基づき、今後も減胎手術の実施は、三つ子以上の多胎か、双子で母親が心臓病などの重い病気を抱えている場合とする。対象とする胎児はほかの胎児や母体への影響を考慮して決め、選別を目的とした遺伝子や性別の確認はしない。
遠藤教授は「手術を必要としている人が多いにもかかわらず、議論が進まないまま現在に至っている。妊婦には世の中に認められていない手術という後ろめたさがあるのかもしれない。多胎の場合に選択肢の一つとして手術を選べるようにしたい」と話している。

◆減胎手術=不妊治療で排卵誘発剤を使うなどして多胎になった場合に行われ、母体保護法が定める「人工妊娠中絶手術」には該当しない。厚生労働省の専門部会は2003年、母子の生命保護の観点から認められうるとの方向性を示し、手術は個別に慎重に判断すべきだとしている。