万博で一転、拉致問題のパネル展を開催へ 「政治性の排除」覆した執念

大阪・夢洲(ゆめしま)の大阪・関西万博会場で8月11、12日、北朝鮮による拉致問題の実態を伝えるパネル展が開かれる。ただ、その実現には紆余曲折(うよきょくせつ)があった。1月、大阪府・市議会が会場で啓発ブースを設置することを求めたものの、政府は万博から政治性を排除したいとの考えから見送り。その後、万博でウクライナ支援を念頭に置いたイベントが行われたことなどが追い風となり、一転、開催が決まった。
拉致問題の展示は、地元自治体である大阪府内の超党派の地方議員有志でつくる「大阪拉致議連」が発案。拉致問題を「一刻の猶予も許されない重大な人権問題」と捉え、政府が出展するパビリオン「日本館」に啓発ブースの常設を求める意見書をまとめて、昨年9月に大阪市議会、同11月に府議会で可決された。
府議時代に議連会長を務めた西田薫衆院議員は今年1月、政府に万博での啓発を求める質問主意書を提出。しかし、政府は2月、啓発の取り組みを進める考えを示しながらも万博での展示の「具体的な予定はない」と答弁。西田氏は「政府内では万博会場で政治的なメッセージを発信することに難色を示す意見があった」と振り返る。
潮目が変わったのは4月だ。英国パビリオンがロシアによる侵攻を受けるウクライナの社会情勢などについて議論するイベントを開催。
さらに、衆議院の拉致問題特別委員会での英国の取り組みの紹介など政府関係者への粘り強い働きかけがあった。この執念が実を結び、ついに今回のパネル展へとつながった。
西田氏は「国内の教育現場や行政機関では拉致問題を政治的な問題として啓発を避けようとする空気がある。万博でのパネル展が国外への発信に加えて国内での取り組みを後押しし拉致被害者家族の希望の光になれば」と期待を寄せている。
「人生を奪われた拉致被害者~北朝鮮による日本人拉致問題パネル展~」は万博会場のギャラリーEASTで開催。
8月11日(月・祝)は正午から午後9時まで、12日(火)は午前9時から午後6時まで。(山本考志)