芥川賞作家、柳美里さん(57)が16日までにX(旧ツイッター)を更新。自身の国籍などについて寄せられた質問に回答した。
参院選(20日投開票)で外国人政策が争点の1つとなる中、SNS上でも議論が繰り広げられている。柳さんは12日にXを通じ「『外国人は日本から出て行け!』の声がかつてないほど大きくなっている」と書き出した上で「おおやけに、外国人排斥を叫んで良いことになり、それによって多くの支持を集めている」と指摘。「日本で生まれ育った外国人は、いったいどこへ出て行けばいいんでしょうかね?」と疑問を投げかけ、在日韓国人として「わたしは外国人です。もちろん、投票券は届きません。選挙期間中は、様々な情勢を至近距離から遠目に眺めている」と複雑な思いをつづっていた。
その後の投稿では、自身に寄せられた言葉を一部紹介する形で「国(韓国)へ帰れ (日本国籍に)帰化すればよい の大合唱がわんわんと押し寄せているが、それは、他人に言われる筋合いのことではない。私の人生は私のものです。国籍の変更や、居住地は、私の選択です」とキッパリ。「私の属性の中で国籍はたくさんある属性の中の一つに過ぎないが、それに塗り込められてしまう人が激増しているのを肌で感じる。その肌感覚は、排除される側に含まれない人には伝わりづらいだろう」とつづっていた。
今回、一部ユーザーから「日本在住に拘(こだわ)るメリットは?」との質問を受け、「というあなたの質問を、あなたに返したら、なんと答えますか?日本に生まれ育ったから、メリット・デメリットを考えることもなく、この国で過ごしている、というのが正直なところなのではないでしょうか?」と推測した上で、「わたしも同様です」と柳さん。茨城県土浦市で生まれ、神奈川県横浜市で育った「ハマっ子」であることなど自己紹介し、「生まれ、育ち、生きて、関わった場所、人に、それぞれ切なくなるほどの思い出がありますが、わたしは生来の流れ者なので拘りはありません。思いつきが全ての行動原理で、行き当たりばったりの姿勢を通しています。メリット・デメリットでは動いていません」と説明した。
続けて「あなたは?あなたもわたしも自分の人生を歩んでいます。たいていの人の人生は、進歩の道でも発展の道でもない、前進でも後退でもない、内面的で複雑で混沌とした渦のような時間なのではないでしょうか?」と問いかけ、「それでも、あなたも、わたしも、人生の道を最後まで歩まなければならない。危機によって生み出される力が、異なる者を突き飛ばす排除の手ではなく、最も小さくされた者に差し伸べられる救いの手であるように、わたしはいつも祈っています」と思いをつづった。
また、国籍などについて「わたしは、日本で生まれ育ちましたが、両親が韓国籍だったため、国籍は大韓民国で、56年間変更をしていません。柳美里、■(ゆうみり)という名前を持っていますが、テレサ・ベネディクタ(エーディト・シュタイン)というカトリックの洗礼名を持っていて、この名前を意識する方が多いです。香雨(こうう)という書道の雅号も持っていますが、こちらはだいぶ離れているので、なかなか落款をおすのに勇気がいります(恥ずかしい)」と記し、「つまり、国籍、民族は「柳美里」の社会的な背景を形成した属性に過ぎない、ということです。私には、国籍、民族よりも重要な属性があります」と説明した。
※■はハングルでの名前