ロシアのカムチャツカ半島付近で30日に起きた地震で、震源地近くにシロイルカが座礁し、「地震の前兆か」などとするデマがSNSで広がった。同半島でシロイルカが座礁した情報は2年前のものだったが、このときの動画や画像が使い回されたとみられる。専門家は「災害時にデマは必ず広がるとの前提に立って行動する必要がある」と警鐘を鳴らす。
「カムチャツカ半島では強い潮流により5頭のシロイルカが海岸に打ち上げられた」。地震発生後の30日午後、X(旧ツイッター)にこんな投稿が上がった。地元の人がイルカを海に戻そうとする様子が撮影された動画もあった。
31日現在、この投稿は450万回以上表示され、「地震の前兆か」「イルカは地震を予知できる」などと誤った情報が瞬く間に広がった。中には、海洋哺乳類研究者のコメントとして「シロイルカは海底の振動や音の異変に反応することがあり、今回の行動は偶然とは言い切れない」などと真偽不明の投稿もあった。
ところが、この動画はロシアで2023年に撮影されたもので、地震とは全く無関係の「フェイク動画」だった。ロシアの大衆紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」によれば、「カムチャツカ地方の知事はシロイルカの被害を確認していない」などと伝え、拡散された情報は「フェイク」として注意を呼び掛けた。
ただ、日本では地震の前兆現象として、イルカやクジラの集団座礁と結びつける話題がたびたび上がる。2011年の東日本大震災では、発生7日前に茨城県の海岸にイルカの一種、カズハゴンドウ54頭が打ち上げられ、科学的な裏付けがないにもかかわらず、後に起きた巨大地震との関連が騒がれた。
『良かれ拡散』もデマ広がりの一因
なぜ災害時にデマは拡散するのか。防災心理学が専門の兵庫県立大、木村玲欧教授は「社会が混乱する中、とにかく自分を安心させる情報がほしいという心理が大きい」と指摘する。こうした心理が働くと、信頼性の低い情報であっても「不安を取り除きたい一心で飛びつく傾向がある」という。
木村教授によれば、デマの拡散手法にも3種類あり、「一つは世の中を混乱させたいと思う愉快犯。もう一つは金稼ぎを目的する人。そして、最後は自分が知ったことをいち早くみんなに伝えたいと思う『良かれ拡散』だ」と説く。
近年は特にSNSで表示回数(インプレッション)を増やして、収益を得ることを目的に刺激の強い投稿を繰り返す「インプレゾンビ」が横行。こうした迷惑アカウントの大量発生もデマが拡散しやすい要因の一つになっているとみられる。
木村教授は「SNSで不安の解消はできない。重要なのは災害時にはデマが拡散するとの前提に立って行動すること。まずは行政やマスコミなど信頼できる情報に触れることを徹底し、真偽不明なものに触れたら拡散や共有しないことを心掛けてほしい」と話す。(白岩賢太)