演芸・演劇評論家で文化功労者の矢野誠一(やの・せいいち)さんが7月23日、心不全で死去した。90歳だった。告別式は親族で済ませた。喪主は長男、敦氏。
東京出身。麻布中学・高校を経て文化学院を卒業後、新劇系の劇団の裏方の仕事や落語会のプロデュースを行った。演芸や演劇に関する豊富な知識と交友をもとに、温かく軽妙な評論や随筆を数多く執筆した。1996年に「戸板康二の歳月」で大衆文学研究賞。主な著書は「女興行師 吉本せい」「志ん生のいる風景」「荷風の誤植」など。
読売新聞で2004年から16年まで「落語のはなし」を連載したほか、03年から現在まで読売演劇大賞の選考委員を務めた。
演劇評論家の大笹吉雄さんの話「文章に一種の俳諧趣味があり、ユーモアあふれるエッセーを楽しませてもらった。朗らかな人柄で次々と出会った人との人脈が広がり、様々なジャンルで花を咲かせた方だった」