今年度の最低賃金(時給)について、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会は4日、引き上げ額の目安を全国平均で過去最大の63円(6・0%)と決めた。今後、各都道府県の審議会で目安通りに改定されれば、最低賃金の全国平均は現在の1055円から1118円になり、初めて全都道府県での1000円台が実現する。
最低賃金は、企業が労働者に支払わなければならない時給の下限額で、都道府県ごとに定められている。労使の代表と学識者の公益委員で構成する小委員会が毎年、物価や賃金の上昇率などを踏まえて引き上げ額の目安を決定。各都道府県の審議会がその目安を参考に議論し、改定額を決める。
7月11日に始まった審議で、労働者側は物価高などを理由に全国平均50円(5・0%)と過去最大だった昨年を大幅に上回る目安を要求。一方、経営者側は抑制的な引き上げを求めた。労使の意見の隔たりは大きく、協議は1981年以来となる7回に及んだ。最終的に公益委員が双方の意見を踏まえて目安を示し、労使が折り合った。
目安は、47都道府県を物価水準などに応じて分けたA(東京など6都府県)、B(京都など28道府県)、C(秋田など13県)の3ランクごとに示された。AとBは63円、Cは64円。下位ランクの目安額が上位ランクを上回るのは初めてで、地域間格差を是正する狙いがある。
現在、最低賃金が1000円未満の自治体は、全国最低の秋田県(951円)を始め31県に上る。目安通りに引き上げられれば全都道府県で最低賃金1000円台が実現し、東京と神奈川は1220円超となる見込みだ。新たな最低賃金は10月以降に順次適用される。
政府は、最低賃金の全国平均を2020年代に1500円とする目標を掲げている。実現には毎年平均で7・3%程度の引き上げが必要だ。
石破首相、成果強調
今年度の最低賃金(時給)引き上げ額の目安が全国平均で過去最大となったことについて、石破首相は4日、首相官邸で記者団に「賃上げこそが成長戦略の要、という基本的な理念が着実に浸透し、成果を上げている」と強調した。
今後、各地の審議会を経て都道府県ごとに定められる改定額に関し、「国の目安を超えて引き上げる場合には、重点支援を講じたい」との考えも示した。