政府は5日、首相官邸でコメの安定供給に関する関係閣僚会議を開いた。議長を務める石破茂首相は「増産にかじを切る」と明言した。昨年来の価格高騰を受け、事実上の「減反」で生産を調整してきたコメ政策を抜本的に転換。耕作放棄地の活用策を模索するとともに、「増産の出口」としての輸出拡大を目指す。
石破首相は「増産に前向きに取り組める支援に転換する」と強調。農家が意欲的にコメの増産に取り組めるよう、支援体制を強化する考えを示した。首相は「耕作放棄地の拡大を食い止め、農地を次世代につなげていく」とも述べ、耕作放棄地も活用しながら、農地の集約や大区画化を進める構え。ドローンなどを使ったスマート農業の技術や、水田に水を張らない稲作技術の導入も進め、生産性の向上を図る。
農林水産省は、増産方針を踏まえて、2026年度の予算案の概算要求に、これらの政策を反映させる。さらに、里山の環境保全につながるような次世代型の農業を加速させるため、新たな支援の枠組みを創設するなど、27年度に中長期的な水田政策も見直す。
会議では、価格高騰の検証結果も報告。インバウンド(訪日客)の増加などにより、コメの需要が増えたことへの状況把握が不十分で、農水省は生産量が足りていると認識していたと振り返った。
また、高温障害で精米の歩留まりが悪化し、店頭での販売量が想定を下回ったことや、消費者の不安心理を背景とした購入量の増加なども価格高騰につながったと分析。農水省は「流通実態の把握に消極的」で、こうした変化に気付くことができず、備蓄米の放出も遅れたことが、さらなる価格上昇を招いたと指摘した。
政策を転換するに当たり、小泉進次郎農水相は「需給の見通しのあり方も改善をしていくことが不可欠だ」と強調した。今後、精米ベースで供給量や需要量、消費動向を把握し、流通実態に即した需給見通しも作成していく。 [時事通信社]