ウイルスを持ったマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」について、北海道が7日、道央地域に住む60代男性の感染を発表した。道内で感染したことが確認されるのは初めて。感染地が急速に全国に拡大していることが裏付けられた。
道によると、60代男性は7月30日に発熱や頭痛、下痢などの症状が現れ、8月2日に地元の医療機関を受診。その後、札幌市内の医療機関に入院した。検査の結果、SFTSの感染が判明した。男性は8日現在も入院中だが、症状は回復に向かっているという。
マダニの成虫の体長は吸血前が3~8ミリ程度で、吸血後は10~20ミリ程度と2倍以上に肥大することから、目視で確認できる。長いものでは10日以上にわたって血を吸い続ける。SFTSは6~14日の潜伏期間を経て発症する。
男性への聞き取りでは、潜伏期間とされる7月中旬以降、道外に出ていないほか、日常的に草木に触れる機会があり、男性自身が「ダニにかまれた」と話していることなどの状況から、道は男性が道内で感染したとみている。
道感染症対策課は「マダニは鳥などによって道外から運ばれてくることもあり、ウイルスを持ったマダニが道内にいると考えられる」(担当者)としている。道央は、札幌市、小樽市、苫小牧市、日高町などの自治体を含む地域。
SFTSは平成25年に山口県で国内で初めて感染者が確認されて以降、九州・四国・中国地方など西日本地域を中心に感染が徐々に広がってきた。相対的に東日本では感染確認が少なかったが、静岡県で今年6月以降、感染者数が過去最多ペースに。7月には隣接する神奈川県で発症した60代女性の県内感染が判明し、「関東上陸」が確認された。
厚生労働省などによると、SFTSは発症すると、発熱や嘔吐、下痢のほか、意識障害や失語などの神経症状、皮下出血や下血などの出血症状が現れる。致死率は6.3~30%。有効な薬やワクチンはなく、治療は対症的な方法しかない。平成25年以降、今年4月末までに計1071件の感染が確認され、そのうち117人が死亡している。
マダニに直接かまれて感染するケースのほか、感染したイヌやネコなどの動物を通して人間が感染するケースもある。マダニは草むらなどに潜み、春~秋に活動が活発となる。畑仕事やアウトドアレジャーの際は、長袖・長ズボンなど肌の露出を避ける服装をしたり、ダニに効果がある虫よけスプレーを使ったりすることが対策となる。