「森友文書」3回目開示 雅子さんが財務省前で取材に応じた深いワケ…文書には「情報隠し」の記述【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】

【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】
お盆休みに入った13日の昼下がり。都心の官庁街、霞ヶ関も普段より人影が少ないが、財務省の正面は報道陣でごった返していた。森友事件を巡る情報開示を待ち構えているのだ。
森友学園への国有地巨額値引きに端を発した財務省の公文書改ざん事件では、近畿財務局の赤木俊夫さんが命を絶った。妻の雅子さんに対し、財務省は段階的に情報開示を始めた。いずれも財務省が事件を捜査した検察に任意提出した文書だ。
3回目となる今回は、財務省や近畿財務局の職員が手控えとして保管していた約1万8000枚の文書が出された。開示を受けて財務省から出てきた雅子さんは、待ち構えた報道陣の前で取材に応じた。開示がお盆休みのさなかとなったのは想定外だったが、事態を前向きに受け止めた。
「お盆なので(亡くなった)夫もこちらに来ていると思います。夫も(開示文書を)見たかったんじゃないかなと思って。財務省の方に『あなたの横にうちの夫がいますよ』って言ったらすごく青ざめていましたけど。残業したり休日出勤したりされていると思うので、そこはとても感謝しています」
一連の情報開示のきっかけは石破茂首相の決断だった。開示を求める裁判で雅子さんは1審で敗訴。2審では逆転勝訴したが、国が上告して争うのではないかと身構えていた。ところが今年2月、石破首相が上告しないと決断。さらに首相の指示を受け、財務省はこれまで頑なに存在すら認めてこなかった文書をようやく開示し始めた。
「本当に石破さんにお礼を言いたいです。開示文書が出たのは石破さんのおかげです」
雅子さんは、多数の人が集まる財務省前での取材に怖さを感じて、過去2回は開示直後の報道陣の取材に応じていなかった。今回応じたのは、参院選後、石破首相の退陣を求める声が上がる中で、感謝を伝えたかったからだ。真相解明をめざし裁判を始めてから5年余り。この間に安倍、菅、岸田、石破と4人の首相が就任したが、情報開示に動いたのは石破首相だけだった。
「石破さんには続投してほしいです。それが一番大事な言いたかったことです」
この日開示された膨大な文書のうち、目を通したのはまだ一部だけだ。それでも「極力新たな文書を開示しないように対応することで与党と調整」など、情報隠しに動いていたことを示す記述もある。雅子さんはこれからじっくり内容を確かめることにしている。(随時掲載)
(相澤冬樹/ジャーナリスト・元NHK記者)