モバイルバッテリーの発火事故が相次ぎ、旅客機内の手荷物棚に入れず手元に置くよう求める航空各社の呼びかけが7月に始まったことなどを受け、高速バスを運行する西日本の一部企業でも今夏、バスのトランクにバッテリーを収納しないよう協力を要請する独自の試みをスタートさせた。会社側は「バスでも発火事故のリスクを排除したい」としており、今後バス業界にも取り組みが広がる可能性がある。
《モバイルバッテリーは、バスのトランクルームには収納せず、座席付近の目の届く範囲で管理をお願いいたします》
公式サイトに7月31日、こんなメッセージを掲載したのは、JR西日本の子会社「西日本ジェイアールバス」(西日本JRバス、大阪市阿倍野区)。同社によると、航空各社が国土交通省の要請に基づき7月8日から呼びかけを始めたほか、同月20日には東京都内のJR山手線車内でバッテリーが発火し、5人が負傷する事故も起きたことから、独自の取り組みとして始めたという。
モバイルバッテリーは高温状態で放置されると異常反応が起きやすく、特に夏場は発火事故が多い。西日本JRバスの広報担当者によると、自社で運行する高速バスなどのトランクルームの温度も「エンジン熱の影響はないが、外気温とほとんど変わらない」状態。特に夏場はバッテリーをトランクに入れると発火事故につながる恐れがあると考え、メッセージの掲載に踏み切った。
広報担当者は「これまで自社のバスで発火事故は起きていないが、事故のリスクを一つでもなくしたい」と強調する。すでに高速バスの乗客には、運転手が荷物を預かる際にバッテリーの有無を確認しているほか、JR大阪駅の高速バスターミナルに要請文を掲示。今後はSNSなどでも協力を求めていく方針だ。
また、西日本JRバスとの共同運行路線を持つJR四国の子会社「ジェイアール四国バス」(JR四国バス、高松市)も8月1日、公式サイトで高速バスの乗客向けに、西日本JRバスと同様のメッセージを掲載した。
JR四国バスの担当者は「西日本JRバスの取り組みを事前に聞いてはいたが、発火事故が多いので当社も独自に判断した」と説明。すでにモバイルバッテリーを座席付近で保管するよう乗客に求める文書をバスに掲示しているほか、今後は「車内外の自動音声案内などでも協力を要請したい」(担当者)としている。