全国各地の川や湖で相次ぐ水難事故は、午後1~4時台の明るい時間帯に多発していることが、水辺での事故などを調査する公益財団法人・河川財団の分析でわかった。昼食後の気の緩みや疲れなどが原因とみられ、専門家はライフジャケット着用の徹底を呼びかけている。
水難事故の要因は様々で、子どもから高齢者まで年齢に関係なく起きている。
河川財団は、2003年から24年に報道された川や湖などでの水難事故3920件を分析。その結果、午後1時~4時台には300件を超え、3時台の441件がピークだった。
事故に遭う状況では、川遊びなど水の中での活動中が約6割を占めていたが、川の近くでボール遊びなどをしていたり、橋から転落したりしたケースも約3割あり、水辺は常に危険と隣り合わせであることが示された。
菅原一成上席研究員は「昼食後は気が緩みがちになり、朝から活動すると疲れも出てくるため、事故が起きやすい。必ずライフジャケットを着用すべきだ」と指摘。飲酒後の事故もあるという。
今年も川や海などで事故が相次いでいる。日本財団などが、報道された水難事故を分析したところ、事故に遭った人は7月1日~8月11日に188人に上り、うち118人が亡くなっている。警察庁の統計では、昨年水難事故に遭った人は過去10年で最多の1753人(死者・行方不明者816人)だった。
夏休みに目立つ子供の事故
夏休み期間中は子どもの水難事故が目立つ。今年7月には、和歌山県紀の川市で川遊び中の男子中学生が溺れて亡くなった。
子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフキッズジャパン」顧問で小児科医の山中龍宏さんは「20分水遊びをしたら10分休むようにし、付き添いの大人は子どもの機嫌が悪い、足取りが重い、など疲れのサインに注意して」と話す。
事故防止の啓発に取り組むNPO法人「アクアキッズセーフティープロジェクト」のすがわらえみ代表は、事前の備えと対策の重要性を強調。具体的には〈1〉ライフジャケットや、かかとが外れない靴を着用する〈2〉子どもは1人で遊ばせない〈3〉物が流されても追いかけない――などを挙げる。
また、救助に向かった人が犠牲になるケースが後を絶たないことから「溺れた人がいても飛び込まずに119番、海なら118番に通報して」と呼びかける。
小学生の時に川で溺れた経験がある京都市の自営業小松瑶子さん(36)は運良く父親に助けられたが、ライフジャケットは着ていなかった。小松さんは「泳ぎは得意だったのに、何もできず足がつかない所まで流された」と振り返り、事前準備や保護者の付き添いの大切さを訴えた。