北海道・釧路湿原の周辺で進む大規模太陽光発電所「メガソーラー」について、著名人が貴重な湿原の破壊につながるとして、X上で次々に反対表明している。
もっとも、業者側は、環境保全に努めていると反論し、再生可能エネルギーの有効活用につながると主張しているようだ。釧路市は、どう考えているのか、担当者に取材した。
「地形を変えてまであのばっちいものは必要なのか」
アルピニストの野口健さんは2025年8月18日、X上で、ファッションモデルの冨永愛さんの投稿を引用して、こう呼びかけた。冨永さんは7月2日、「なんで貴重な生態系のある釧路湿原にメガソーラー建設しなきゃならないのか」と疑問を呈し、「反対の署名にサインしました」と明かしていた。
報道によると、釧路湿原国立公園の周辺にある釧路市内の市街化調整区域で、大阪市内の業者がメガソーラーの建設を進めているが、国の天然記念物オジロワシの巣がその区画内にあることが分かった。市教委は、文化財保護法に基づき、巣からの半径500メートル以内に立ち入ることを9月末まで禁止しているが、業者は、その範囲外で建設を進めていると報じられている。
野口さんは、7月25日のX投稿で、「山を登っていると山麓によくメガソーラーなるものを目にしますが、森林伐採をし、地形を変えてまであのばっちいものは必要なのか。生態系を破壊し、災害被害まで拡大する」と訴えるなど、反対の意思を伝える投稿を続けている。
野口さんは、「ヒマラヤから9月下旬に帰国しますが、なるべく早く釧路に向かいます」と明かし、同志と考える著名人にXで連携を呼びかけた。タレントのつるの剛士さんが「是非私もお供させてください」とリプライで反応すると、野口さんは、「一緒に現場から声を上げて下されば100万馬力です!!!」と喜んだ。また、「もう取り返しのつかない状況」などとXで反対の意思表明をしたロックミュージシャンの世良公則さんにも、一緒に視察することを提案していた。
「全部ダメではなく、自然環境と調和を図るのが望ましい」
著名人以外でも、地元の猛禽類医学研究所など6団体が署名サイト「change.org」で、「釧路湿原南部におけるメガソーラーの駆け込み建設中止を求めます!」とする活動を始めると、一般からの賛同者が相次ぎ、5月9日に6万7143件の署名を鶴間秀典市長などに提出した。8月19日18時現在では、11万件以上に達している。
メガソーラー建設について、釧路市は、貴重な動植物へ影響を与えると考えられる場合には、反対する姿勢だ。
23年7月に「太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」を定め、10キロワット以上の施設を対象に、専門家に助言を求めたり、住民説明会を開いたりすることを業者に求めた。25年6月1日には、「自然環境と調和がなされない太陽光発電施設の設置を望まない」とする「ノーモア メガソーラー宣言」を行った。特別保全区域を設けて開発を許可制にする条例案も、9月定例市議会に提出する予定で、10月1日に施行して26年1月1日以降に着手する事業への適用を目指している。
条例について、市の環境保全課は8月19日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
野口健さんの活動との関わりはないとし、中立の立場で環境保護を進めるという。
ただ、25年までに着手した事業については、ガイドラインしか適用できないという。国立公園の外にあるため、開発への規制もないとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)