司法試験に合格し、1年間の司法修習で実務などを学んで最終試験(司法修習生考試)に合格した者には判事補、検事、弁護士となる資格(法曹資格)が与えられる。司法制度改革で司法試験の合格者は増加しているが、裁判官、検察官のなり手不足が常態化する一方、弁護士は「過剰供給」ともいえる状況が続いている。
1~2%が未登録に
日本弁護士連合会(日弁連)によると、令和6年度に司法修習を終えた77期は計1826人だった。このうち、7年度の弁護士一斉登録(日弁連に一括で登録申請する手続き)をしたのは1564人。裁判官の任官は90人、検事の任検は82人となった。
弁護士の一斉登録は77期全体の85・7%。前年度(76期)の71・4%、5年前(72期)の69・4%、10年前(67期)の63・3%と比べても割合が高くなっており、司法試験合格者の中での弁護士人気は年々、上昇していることがうかがえる。
一方で、弁護士登録も裁判官・検事への任官もしなかった「未登録」は、77期は全体の5%に当たる90人だった。例年、一斉登録の後に新規で弁護士登録する人もおり、1年後に未登録のままなのは1~2%程度。77期も、10~20人程度が未登録のまま法律の知識を活用して一般企業や公官庁などで勤務するものとみられる。
「弁護士といえば以前は高収入のイメージが一般化していたが、司法制度改革以降は弁護士過多で競争が激しくなり、そういうイメージは薄れてきている」。法務省元幹部はこう前置きした上で「とはいえ、『手に職をつける』といった意味では手堅い人気があるようだ」と語る。
「暗い」イメージ、不祥事の余波
また、77期で判事補として採用されたのは全体の4・9%だった。76期は5・8%、72期5・0%、67期5・1%。判事補の総定員が8割しか埋まらない中、志望者数も横ばい傾向にあるといい、裁判官不足が相変わらず続いている。
同元幹部は「総定員自体が100人減ったにも関わらず、定員割れによる人手不足が常態化している。原因の1つとして『暗いイメージ』が指摘されている」と明かす。
他方、平成19年度の113人をピークに志望者数は微減傾向となっていれる検事はどうか。労働の過酷さから弁護士に転身する検事が以前から少なくなく、人員不足は常態化している。
同元幹部は「(22年に発覚した)大阪地検の証拠改竄(かいざん)事件直後も影響はみられなかったが、最近は特捜検事の不適切な取り調べを巡る問題や袴田事件の再審無罪もあった。どう影響するかは未知数だ」と危惧する。
77期を代表して法務省で報道陣の取材に応じた23歳~33歳の4人の新人検事は、検察捜査に厳しい目が向けられている中で求められる検事像について「一件一件の事件に真摯に向き合う姿勢を大切にする検事」「複雑かつ多様化する犯罪にも対応できる検事」と例示。強引な取り調べについては「批判は適切に誠実に受け止めて職務をしていく必要がある」と語った。
「食えない」弁護士も
法曹資格に裏打ちされた法曹3者。高い専門性を持ち、景気などに影響されない安定した職業とみられがちだが、検察官と裁判官は公務員であり、定員が急拡大することはまずない。
結果として大量の弁護士が生まれているが、供給過多になれば仕事を奪い合うことになり、「稼げない」弁護士も多くなる。日弁連関係者は「経済面で弁護士の弱体化は、憂慮すべきレベルに達してきている」と危機感を募らせている。
また法務・検察当局者は、判事補、検事ともに人員不足が改善されない点について「『宮仕え』の身である以上、転勤は不可避だが、共働きの増加や少子化による初等教育の激化などで地方赴任を嫌う傾向が強まっている。人手不足の解消は考えにくいのが現状だ」と本音を吐露する。
今年度の司法試験も、すでに採点が進んでいる。前述の法務省元幹部は「司法制度改革の評価が定まるには、まだまだ時間がかかりそうだ」と語った。(大島真生)