中国電力が原発の使用済み核燃料を一時的に保管する中間貯蔵施設について、山口県上関町での「立地が可能」と判断したことで、今後は町の判断に焦点が移る。ただ、町内では賛否が割れ、近隣自治体からの不安の声も根強く、合意形成に向けたハードルは高い。
「中間貯蔵施設は地域の活性化や町の財源確保につながる大切なものだ」
推進派の「上関町まちづくり連絡協議会」の古泉直紀事務局長(67)は中国電の判断を歓迎。町は使用済み核燃料1000トンを50年間貯蔵した場合、360億円の交付金が入り、固定資産税67億円が見込まれると試算する。25年度の一般会計当初予算規模が約34億円の町財政への恩恵は多大だ。
地域振興の起爆剤としての期待は高く、古泉さんは「協議会として講演会を開くなど、施設の安全性、必要性を皆さんに伝えたい。事業者や国も前面に立ち、町内や周辺市町の不安を取り除いてほしい」と語る。
一方、町内の「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の木村力代表(78)は「搬出先が決まらず『永久貯蔵施設』になるのではないか。使用済み核燃料を何十年も安全に保管できるとは思わない」と懸念する。29日も反対派の住民ら約40人が町役場を訪れ、「町を売るな!」「ここは不適地」などと書かれた紙などを広げて抗議した。
上関町の西哲夫町長は、建設受け入れ可否の判断について「住民の代表である町議会で判断すべきだ」との考えを繰り返す。26年2月には任期満了を迎える町議選が予定され、結果が影響する可能性もある。町長の任期も同年10月までだ。
一方、近隣自治体からも反対の声が上がる。山口県田布施町の議会は3月、「これほど重要な問題を上関町だけで判断することは許されない」として、建設反対の決議を賛成多数で可決。ほかの自治体でも、市民団体が建設反対の決議を求める請願書を提出する動きが出ている。
放射性廃棄物の問題に詳しい東洋大の中沢高師教授(環境社会学)は「そもそもバックエンド(発電が終わった後段階)について、再処理工場や高レベル放射性廃棄物の最終処分場が稼働しなかったり見通しが立たなかったりするなど、国が進める核燃料サイクルの不確定事項が多すぎることが地元判断を難しくさせている問題構造がある」と強調。そのうえで「情報公開や独立した専門家の検証など、住民がリスクについて判断できる環境を整えることが求められる。当該自治体だけではなく、広域で合意形成を図るには、県の役割も重要だ」と指摘する。
【脇山隆俊、大山典男、森永亨】
中間貯蔵施設
青森県六ケ所村で建設中の再処理工場へ搬出するまで、使用済み核燃料を一時的に保管する施設。全国の原発で使用済み核燃料は敷地内のプールなどで保管されているが、保管容量の約8割が埋まっている。山口県上関町で建設されれば、原発敷地外での使用済み核燃料保管施設は、青森県むつ市に次いで国内2カ所目となる見通し。一方、再処理後に出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定も進んでいない。