ANAウイングス、昨年4月から重大インシデント3件…機内の気圧低下で乗員乗客が倦怠感など

国交省が厳重注意

全日本空輸のグループ会社「ANAウイングス」でパイロットの人為的ミスによる運航トラブルが相次いでいるとして、国土交通省は29日、同社に対し、行政指導にあたる厳重注意をした。9月19日までに再発防止策を報告するよう求めている。
このうち、北海道・稚内空港で今月20日に発生した重大インシデントでは、パイロット2人が航空法に違反して滑走路(全長2200メートル、幅45メートル)の状況を確認する手順を一部怠った上、鳥防除作業車両が走行中の滑走路に着陸したことが判明。2人は滑走路内の車両に気付いておらず、国交省が特に問題視している。
国交省などによると、ほかにも昨年4月、鳥取・米子空港への着陸の際に降下開始が早すぎたため、地上への異常接近を知らせる対地接近警報装置(GPWS)が作動し、着陸を直前でやり直す「ゴー・アラウンド(着陸復行)」をした。
同6月には愛知・中部空港へ向けて和歌山県上空を降下中に、客室内の与圧状況の監視が不足したまま手動操作で気圧を下げ過ぎ、乗客乗員約10人が耳の痛みや倦怠(けんたい)感などを訴えた。
昨年4~6月には、これらの重大インシデントとは別に、パイロットのミスを主原因とする運航トラブルが4件相次いでいた。同社はパイロットらの技量を確認する「緊急点検フライト」を実施するなどの対策を講じたが、今年5月に広島空港で、着陸機が工事で閉鎖された誘導路に誤進入。さらに稚内空港での重大インシデントも発生した。
一連の運航トラブルを受け、国交省は「安全管理システムが社内全体に対して有効に機能していない。航空輸送の安全への社会的信頼にも大きく影響を及ぼしかねない」と指摘した上で、安全管理システムの総点検と是正などを同社に求めた。