観光客殺到の京都・嵐山で渋滞なぜ起きる 京都府警と民間企業が交通データ分析へ

観光客の急増で交通渋滞や事故リスクの高まりが懸念されている京都・嵐山地区(京都市右京区)での課題解決に向け、京都府警は民間企業などと連携し、新たなプロジェクトを始動させた。官民それぞれが持つ交通事故の統計や人流などのデータを活用・分析し、双方の強みを生かしながら次なる対策を講じていく。
プロジェクトは「京都はんなり和(なごみ)のみちプロジェクト」。歩行者とドライバーが互いを思いやり、交通事故のない社会を実現することを目標としている。
プロジェクトには府警のほかトヨタ自動車や旅行大手のJTB、損害保険大手の東京海上日動火災保険などが参加。民間が保有する車両や観光客の動向などに関するデータと、府警が持つ交通事故の統計データを組み合わせるなどして分析し、効果的な安全対策の導入を目指す。
府警によると、昨年府内で発生した交通事故は約3500件。10年前から約6割減少している一方、「生活道路」と呼ばれる幅員5・5メートル未満の道での事故は令和4年以降、増加傾向にある。
特にプロジェクトで注視するのが嵐山地区だ。近年、国内外からの観光客の集中によって、周辺の生活道路や幹線道路での渋滞などの交通障害が顕在化し、交通事故発生のリスクが高まっている。プロジェクトでは同地区での交通実態の把握を進めるとともに、事故発生が懸念される場所の可視化や要因解析にもつなげる考えだ。
府警の吉越清人本部長は「警察が持つ事故発生現場などの『点』の情報と、各社が保有する人や車の流れが分かる『線』の情報が、効果的な交通対策につながることを大いに期待している」。プロジェクトに参加する一般社団法人トヨタ・モビリティ基金の松田進理事長代行は「データを組み合わせて、住民と観光客が錯綜(さくそう)する生活道路での事故ゼロを目指していきたい」と力を込めた。
プロジェクトは来年3月末まで続けられる。(塚脇亮太)