市議から「わしの言うことがきけんのか」「いられないようにしてやる」…高松市職員にアンケート

高松市職員に対して昨年、市議からのハラスメントに関するアンケートがあり、50人が「市議からハラスメントを受けたことがある」と回答していたことがわかった。読売新聞が情報公開請求をして明らかになった。意に沿わない対応へのどう喝や、市議が地盤とする地域や支援者を優遇する要求などが挙げられている。(黒川絵理)
アンケートは昨年7月、市議(現在は辞職)の依頼を受け、市議会事務局名義で市職員に実施。823人が回答した。
読売新聞が情報公開請求で入手した回答結果の自由記述欄には、「多くの議員は市職員との信頼関係のもとで活動しており、感謝している」などの趣旨の記載が複数あった。一方で、「職員はあなたの奴隷ではない」「議員は市民の代表だから偉いと勘違いしている人物は議員になるべきではない」といった厳しい意見も目立っていた。
「市議からハラスメントを受けたことがあるか」の設問では、728人が「ない」としたのに対し、50人が「ある」と回答した。
職員が受けたハラスメント、不快な言動を尋ねると、多様な記述が並んだ。「基準に基づき断る案件で、説明し断ったが『わしの言うことがきけんのか!』と叱責(しっせき)された」「電話で名前を聞いたら『声で誰かもわからないのか。所属長に連絡をしてそこにいられないようにしてやる』と言われた」「議員の地盤地域の事業を推進するように執拗(しつよう)に要求してくる」――。
市議会での質問に関する訴えもあった。「質問の趣旨を確認すると、業務時間外の遅い時間を指定される」「質問の提出期限を過ぎても、出してもらえなかった」「資料に記載のあることまで執拗に聞かれ、説明の揚げ足を取られ、詳しく説明すればするほど質問項目を増やされた」。答弁作成の負担増に関する内容が目立った。
中には「議会の質問原稿を一から作らされた」との記載もあった。
市職員に対するものや市議同士を含めて「ハラスメントを受けているのを見たことがあるか」との問いには、9割(739人)が「ない」としたが、1割ほどの76人が「ある」とした。
ハラスメントをしたとされる議員がアンケート当時、現職か元議員かを尋ねた設問(複数回答可)では、現職との回答が58人、元職は48人だった。
内容については、68人が「ささいなミスを大声で長時間叱責したり、意に沿わない対応にどう喝したりする」を選択した。対応については最多の53人が「何もしなかった」。理由として、うち35人が「相談しても解決しないと思ったから」とした。
また、特定の市議を指し、「必要性が極めて薄いと思われ、内容も不明確な情報公開請求を異常な件数提出する」との主張も散見された。
ハラスメント防止に望むことを尋ねる設問(複数回答)では、「十分な調査、処分の厳格化」(544人)、「意識改革・啓発、教育」(525人)などが多かった。
議会事務局などによると、アンケート結果は依頼した市議の要望で全市議に共有され、「何らかの対応をすべきではないか」との意見も出た。しかし、依頼した市議が辞職したため、対応は決まっていないという。
自治体職員訴え相次ぐ

香川県内では近年、自治体職員が議員からハラスメントを受けたと訴える問題が相次ぐ。
高松市では2023年、30歳代の男性市議が議員控室や委員会で職員に「虚偽説明」などと発言。大西秀人市長から対応を要請された市議会は、市議らから聞き取りをした上で、「職員に対する個人攻撃ともとれ、不適切」として厳重注意した。再発防止策として全市議を対象にハラスメント研修が実施された。市議は後に辞職している。
東かがわ市で今年6月、男性議長(70)が市の会合で職員を呼び出して、別事業の問い合わせをし、見積書を見せるよう要求したなどとして、上村一郎市長が議会に対応を要求。市議8人からなる調査特別委員会が開かれている。
善通寺市でも7月、男性市議(49)が市職員に不当な要求や威圧的な言動を繰り返していると辻村修市長が議会に訴えた。調査のため、市議と弁護士ら8人の政治倫理審査会が設置されている。