札幌市で2008年、約900万年前の地層から発見されたセミクジラ科の化石が新属新種だったことが、市博物館活動センターなどの研究チームの調査でわかった。研究論文が先月、海外の学術誌に掲載された。これまで化石が見つかっていない時期(1600万年前~600万年前)のもので、専門家は進化の過程を解明する手がかりになるとしている。
化石は08年10月、市内の男性医師が同市南区小金湯の豊平川の河原で見つけた。チームは4年かけて肩甲骨や指の骨など全身の約7割を発掘。頭や耳の骨の特徴から系統を調べ、どの属、種でもないと判明した。学名は「メガベリーナ・サッポロエンシス(札幌の巨大なセミクジラ)」、和名は「サッポロクジラ」。
頭のサイズから全長12・7メートルと推定され、初期のセミクジラ(全長約5メートル)の2倍以上の大きさだった。全長15メートルほどになる現代のセミクジラよりは体つきが細くて腕は長細く、泳ぎ方が変わった可能性があるという。セミクジラ科は2000万年前の化石が最も古い。
センターの田中嘉寛学芸員は「世界で最も良い保存状態のセミクジラ科の化石」と強調。国立科学博物館の田島木綿子(ゆうこ)・研究主幹は「セミクジラはかなり昔から大型化していたといえそうだ。進化を説明する根拠となる材料が新たに見つかったのは意義がある」としている。
化石の一部はセンターで常設展示し、北海道大総合博物館(札幌市)で頭蓋骨のレプリカなどを展示している。