佐賀県警科学捜査研究所(科捜研)の職員(当時)によるDNA型鑑定の不正を巡り、県警の福田英之本部長は29日の記者会見で陳謝した上で、第三者機関による調査は必要ないとの認識を改めて示した。また、虚偽有印公文書作成・同行使や証拠隠滅などの容疑で書類送検した元職員について「悪質性が高い」として、起訴を求める「厳重処分」の意見を付けたと明らかにした。一方、日本弁護士連合会(渕上玲子会長)は29日、第三者機関の設置を求める会長声明を出した。
県警が8日に不正を公表後、記者会見を開くのは初めて。福田本部長は県議会の答弁などで、県公安委員会が第三者的立場から県警内部の調査を確認しているとして、第三者機関による調査の必要性を否定していた。
この日の会見でも福田本部長は、調査対象となる資料には「具体的な事件の捜査に関する、個人のプライバシーや捜査手法の詳細など機微な内容を含む」と主張。「法令に基づく守秘義務が課される公安委が(事実関係を)確認されることが、制度的にも実態的にも適切だ」と述べ、外部機関による調査はそぐわないとの見解を繰り返した。
また再発防止策として県警は、分析結果を印字する際などに上司が立ち会う▽鑑定の担当者を2026年度から1人増員▽職員の教養を充実させるため福岡県警科捜研に25年10月から職員を派遣▽他県の幹部職員を一時的に招くことを検討――などを明らかにした。樋口勝馬刑事部長は「幹部による業務管理、チェック機能にも要因があった」と初めて陳謝した。
県警によると、24年10月に元職員が提出した書類の不備が見つかったことから、県警が内部調査を開始。県公安委には、25年1月に初めて説明したという。
県公安委は29日、「11回にわたり詳細な報告を受け、必要な指導をしてきた。県警による再発防止策の確実かつ継続的な履行を確保し、県警が県民からの信頼を得られる組織となるよう、管理を続ける」などとするコメントを発表した。
一方、日弁連は29日、「警察が実施する科学鑑定への信頼を根幹から揺るがすものだ。佐賀のみならず、他の都道府県警でも同様の不正行為が行われていることを強く懸念させる」などとして法務省や最高検、警察庁などに対し、問題の検証のため第三者機関の設置を求める会長声明を出した。
一連の問題では、科捜研の40代の技術職員(8日付で懲戒免職)がDNA型鑑定を巡り、実際にはしていない鑑定を実施したかのように装って報告するなど7年以上にわたり130件の不正行為をしていた。【成松秋穂】